2011年12月21日水曜日

消化されないアブラソコムツ

のぞみの目線 8月31日号より

駿河湾に停泊している船上で、夜更けに皆で魚釣りをしていました。
船員さんの竿に大きいアタリがあって、けっこう時間をかけて大きな魚を
釣り上げました。

照明に反射して妖しく光る目が印象的な魚でしたが、名前を聞いてみると、
「アブラソコムツ」という魚だとのこと。

引きが強いので、釣りをする人には好まれるのですが、この魚のアブラは
人間が消化できる種類のアブラではないので刺身で数切れ食べるとお腹が
大変なことになってしまうことから、わざわざ食べる人はいないのだそうです。
ただ、覚悟して食べると大トロのようでそれなりにおいしいという話でしたが、
このときも食べてみようということにはなりませんでした。

そんな訳で、アブラソコムツは食品衛生法第6条2項で規定されている
有害な物質を含むものとして、食用が禁止されています。

アブラソコムツに関する規定は、昭和56年1月10日の厚生省衛生課長の
通達によってなされたもので、それ以降はこの魚を食用に扱うことは
刑事処罰の対象とされることになりました。

実際に鮮魚商がこの魚を販売したことについて、食品衛生法の「有害な物質に
該当するか否か」で最高裁まで争われました。

「アブラソコムツ事件」といいます。

国民の権利を法律で制限するには、刑罰法規の内容が具体的で明確で
なければなりません。

この裁判では食品衛生法の「有害な物質」という規定は不明確であるうえに、
一通の通達をもって、その流通が突然禁止され処罰の対象となるということは、
罪刑法定主義に反しており違法であるとの原告側の主張だったのですが、
結局前審の東京高裁の判決(東京高裁平成7.10.31)のまま、食品衛生法の
文言は抽象的で漠然としたものになっているとはしたものの、「通常の判断能力を
有する一般人の理解において具体的にアブラソコムツにつき、その適用があるか
どうかという判断を可能ならしめるような基準が読み取れるということができ」
「何ら明確性に欠けるところはない」とされ上告は棄却となりました。

多くの法律が、抽象的で漠然とした文言で法律化され、地方公共団体の条例や
通達によって運用されています。

自身の活動に関係する分野では、常に法規制の最新情報を確認しておかなければ
ならないのです。

(Masanori Imamura)

心からにじみ出た態度

のぞみの目線8月24日号より

先日、私はとある高校で高校生の就職採用面接の訓練に参加して
きました。つまりは、私が企業の人事担当者の真似事をして、
高校生に面接の経験を積ませるというボランティアです。
面接を終えていろいろ思うところはありましたが、ひとつ印象に
残ったことは、生徒達も先生方も「声を大きく出すこと」にとても
注意を払っていたことです。
企業の採用担当者の意見として、声が大きい生徒を採りたいと言う
話が多いのだそうで、少々大きすぎるくらいの方がよいということ
になっていました。

私が気になったのは、声の大きさにひたすら注意を促す先生の考え
方です。今時そのような単純な発想で採用決定を左右するとは思
いませんでしたし、面接に臨む高校生達が考えるべき点はもっと
根本的なことではなかったかと、私はあれこれ考え悩んでしまい
ました。

面接とはそんなものか。それとも、もっと別のあり方もあるものか。
私が企業の人事に関係しているわけではないので、どうでもよい
ことだとも思えますが、これはコンプライアンスやCSRと無関係
とは言い切れないような気がします。

私の知り合いに三味線の先生がいまして、この話を聞いていただき
ました。

重要無形文化財常磐津節の保持者として国の指定を受けておられる
方なのですが、その方からこの話について一文をいただきましたの
で紹介いたします。

以下一部抜粋
さて。 
面接という場においてのマナーと云うものは声の大きい小さいと
言った理屈ではなく、
心の奥からにじみ出た対応で臨むのが本当でしょう。
最近テレビ画面で、責任者の何人かが揃っての謝罪場面を度々見る。
その時の頭の下げ方を皆さん良く見ておられますか。
心から謝っている人、仕事として仕方なしに頭を下げている人。
良く観察してご覧になってみてください。参考になりますよ。
ですから面接の場において挨拶するに当たり、身体を○○度前に
倒してお辞儀をしなさい、ではなく、気持ちを込めて相手に接すれば、
挨拶に当たり自然に身体は前屈みになるもの。
教えられた角度に身体を倒すより、相手に好感を持って受け入れ
られるのは、心から出た姿であるはず。
これがマナーの根本であるのではないか。
<常磐津東蔵>
以上抜粋終わり。

面接のとらえ方はいろいろだと思いますが、心からにじみ出た態度が
本来の姿だという考えは、もっと強く意識していきたいと思いました。
(Kojiro Hino)

望星丸

のぞみの目線8月10日号より

 8月6日から8日にかけて東海大学の海洋調査船「望星丸」に乗船
して、伊豆諸島の御蔵島周辺に行ってきました。当初は八丈島に上陸
する予定だったのですが、台風10号の影響もあって、太平洋のうね
りが大きく八丈島の底土港に接岸できないので、結局三日間の洋上生
活となりました。

 今回の航海には、現役の学生の皆さんが実習生として乗船し、プラ
ンクトンネットでプランクトンの調査をしたり、観測機器を用いて駿
河湾の海水を観測したりといった活動が行われました。

 船の上では、そのときの気象や海象などによってスケジュールが変
更されたり、同時にいくつもの作業を行ったりしなければなりません。
実習学生は自分が所属している班内だけではなく、他のグループや教
員との間での「報告・連絡・相談」がとても重要なのですが、実習学
生は慣れていないのでなかなかうまくいかず、情報伝達が混乱したり
実習学生が右往左往したりしている姿をよく見かけました。

 陸上とは違い、行動の一つ一つに意味があって情報の共有や協働が
重要な船上での経験は、学生の皆さんにとってとても良い勉強になっ
たのではないかと思います。

Winny開発者の無罪確定

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111221-00000028-mycomj-sci

ファイル共有ソフト「Winny」を開発/公開したことが著作権法違反の幇助罪にあたるとされ起訴されていた裁判について、最高裁が無罪とする判決を出しました。

もともと幇助罪の成立が危ぶまれていましたので、ある意味では当然との見方もありますが、逮捕に踏み切られた背景というものがあったと思います。

Winnyの問題性が先にあって、著作権法違反幇助は後付の理由に過ぎないといった声もあります。
逮捕が見せしめの道具であってはならないわけですが、現実には著作権法や商標法など知的財産関連法を駆使して逮捕されるケースがしばしばあります。

法的リスクの問題として重要な教訓となりました。

人権に関する課題(その1)

ISO26000では人権に関する課題として、次の8つの課題が提示されています。今回は、「デューデリジェンス」と「人権に関する危機的状況」について説明します。

1 デューデリジェンス
 組織は、組織の決定や行動について、人権侵害の発生がないように注意を払う必要があります。組織や組織周辺の他者による人権侵害が起きることがないかについて、組織はデューデリジェンスの手法を用いて影響力や課題を調査して、その防止をしたり責任を見極めたりすることが求められます。

2 人権に関する危機的状況
   紛争や貧困、環境破壊など直接的に人権侵害に結びつくような状況がある場合には、組織は自らの決定や行動について、充分な調査を行うとともに、それがどのような影響を及ぼすかについて見当することが必要です。何らかの形で影響力を及ぼすことになってしまうような場合、常に人権の尊重に対する責任を意識していなければならないのです。

2011年12月15日木曜日

第六章 社会的責任の中核主題に関する手引(その4)

6.3 人権(その2

 組織が人権を尊重した活動を行うためには、組織とその組織に関連するサプライチェーン全体で行われる活動について、人権に対してどのような影響があるか常に評価していることが必要です。これらを評価するには、その影響を色々な側面から調査しその結果から評価するというデューデリジェンスの手法をとるのが有効であるとされています。

 評価の結果を基に、組織は人権を尊重するという目的達成のために、組織の決定や行動が直接的、間接的にどのような影響を及ぼすかについて検討し、組織の活動によって人権に関連する紛争が発生するような場合には、それを解決するための手段を講じておくことが必要となるのです。

2011年12月7日水曜日

第六章 社会的責任の中核主題に関する手引(その3)

6.3 人権(その1

 ISO26000の中で人権は「全ての人に与えられた基本的権利である」とされています。いかなる組織、そして国家であっても基本的には人権は守るものであるとされます。国家は人権を尊重し、国民を保護する義務と責任があり、そのために一定の制約の範囲内で一部の人権を制約することもできますが、それ以外の組織は人権を制約することはできません。

 組織における人権は、男女の差別や、障害者雇用といった直接組織が関係する分野と、取引先などのサプライチェーンの中で発生している人権侵害などのように、組織の意図とは無関係に人権侵害に間接的に加担しているといったものもあります。

 組織も人権と関わる側面が多いことから、組織にも人権を尊重する責任があるのだということができます。

2011年11月30日水曜日

第六章 社会的責任の中核主題に関する手引(その2)

6.2 組織統治

 組織が意思決定を行うには、意思決定に至るためのプロセスが存在します。このプロセスは組織の中にある何らかの規定や組織風土などが関連して形成されますが、そこには意思決定のためのシステムが必要となります。このシステムを組織統治と呼びます。

 組織統治は、組織の大小や種類に関わらずかならず存在しますが、その形態は組織の目的を達成するために構成されているグループであったりやリーダー個人であったりするなど組織によって大きく異なってきます。しかし、どのような組織でも意思決定のシステムは組織を統治するための最も基本となる部分です。

 ISO26000では、組織統治が他の中核課題に対応するための基本となる部分となるという点が強調されています。

 中核課題に対応できる組織を統治するためのシステムには、説明責任、透明性、倫理的な行動、ステークホルダーの利害の尊重、法の支配の尊重、国際行動規範の尊重、人権の尊重という社会的責任の原則が考慮されていることが必要です。

釣り考 その12 今思うこと

釣りは自然の中で遊ぶことを教えてくれたし、考えると言うとても大事なことも教えてくれたようだ。
今思えば釣りが「今そこにある危機」と言う考え方を僕の心に定着させてくれたと言っても過言でないような気がする。
    例えで渓流について考えると、一人で出かけた場合は自己責任で全ての状況を自分で判断しなくてはならない、

         水量は安定しているか
                  この川は渡れるか
                  浮き石はないか
                  登った崖は降りることが可能か
                  動物(熊)の生活圏に侵入していないか
                  釣りを断念する覚悟と勇気はあるか

  等、正に渓流釣りは常に「今そこにある危機」と直面している。
自然と仲良くすることも自然の怖さも、この単純な釣りを通して学んだ。
魚を釣るために大人も子供も、「どうしたら釣れるか」と真剣に考え、状況に応じた自己の答を出し実践するが思い通りに釣果が上がらなければ、また考える。
多分釣りとはこの繰り返しだ。

仕事に置き換えてみれば、基本的な考え方はこれと一緒だろう、成果を生み出すために有りとあらゆる智恵を絞って進めば、きっと完成するはずなのに、こと仕事となるとどこかで妥協してないだろうか。

釣りを経験していない人は已むを得ないけれど、釣人だったら仕事に妥協癖は付けないで欲しい。
釣りは趣味であっていいし、仕事の息抜きだっていいけれど、やはりどこかに矜恃だけは持ち続けたいと僕は思っている。
僕は今、テンカラでの岩魚釣りしかやらない、毛鉤もオールラウンドの域に達したと思ってはいるが、それでも昨日の毛鉤に必ず来る保証はないし、来なければ少々の修正をする。
柔軟な考え方を持っていなければ、あの用心深い渓魚を毛鉤で誘うことなど無理だろうな。自分に自問自答し迷って、岩魚を仕留める高揚感は仕事ではなかなか経験出来ない。

    この先、東京を中心に大震災が起こるらしいが、渓流釣りで培った「今そこにある危機」を忘れなければ、どのような状況に置かれようと、僕はきっと生き残れると信じているし、人を助けることだって可能だろう。
    世の人よ、時があるならば渓流釣りに出かけてみなされ。 
   
これから先も僕は、テンカラ釣りを通してもっと、もっと貪欲に進化を続けるだろう、何故なら、釣りに最終点はないから。
そして釣り人よ、今日もあの川は眠らない。

2011年11月16日水曜日

第六章 社会的責任の中核主題に関する手引(その1)

6.1 一般

 第六章は、この規格の中で、最も主要な部分と言ってもいいところとなります。ISO26000の中では、社会的責任の中核課題として、(1)組織統治(2)人権(3)労働慣行(4)環境(5)公正な事業慣行(6)消費者課題(7)コミュニティ参画及び発展という7つのテーマを掲げています。組織は、これらの中核課題を俯瞰的に捉えることが重要となります。つまり、これらの課題はそれぞれが完全に独立しているのではなく、相互に関係性を持っています。特に、組織統治は組織が意思決定を行い、行動するために必要な基本的なシステムとされ、この部分を中心として他の6つの中核課題に取り組むことになります。

 組織がこれらの課題に取り組む際には、組織がこの中核課題のどこに関連性があるのかについて検討した上で、取り組むべき課題を決めていくことになります。

 7つの中核課題は、それぞれが相互に関連していますが、実際に組織が課題に取り組む際にはその順序や実際の行動は組織ごとに重要性を考慮して上で、決定していくことができます。

釣り考 その11 そして、銀山湖へ

  平成元年、僕は大和へ異動となった。
    そこで、若い何人かの渓流釣り愛好者と出会い釣り談義に高じていたある日、菅野君が
「銀山湖と言うところにはメートルの岩魚が居るらしいですよ。行ってみたいですよね。」
    と言い出した。
それには僕も興味津々だったので、早速銀山湖が何処にあるのか調べたけれど何処にも銀山湖の情報はなかった。
    それでも諦めないで探し続けたところ、新潟県の奥只見にある奥只見ダムを通称、銀山湖と読んでいることが判った。
    矢も立ても居られず、平成4年7月23日、僕と菅野君は銀山湖に行った。
    僕はその時、まだテンカラ釣りが完成の域にまで達していなかったので、餌釣りと併用したが、テンカラは惨敗であったが、餌釣りは良い釣果を得た。
    大岩魚は渓流ではなく湖でないと釣れないことを地元の釣り宿の親父さんから教えられ、翌年からは自作のスプーンで挑戦したが、ニヤミスさえなかった。
    しかし、キャンプ場の横を流れる中荒沢川のテンカラでは、入れ喰い状態であり、この年ほぼテンカラは完成の域まで昇り詰めた。
    最初の何年かは、何人もの釣り好きが銀山湖に集まって、酒を酌み交わし岩魚釣りに高じ楽しんでいたが、何時しか僕と菅野君だけの年が続いた。
    そして、8年程前高津で共に渓流を楽しんでいた永瀬君を誘ったところ、一つ返事でやって来た。それ以後は、この3人で銀山湖を満喫している。

    20年目になった僕や菅野君は、目標は2尺オーバーの大岩魚であっても銀山湖に行って釣りが出来るだけで感謝しているし、日に自分の食べる分を釣るだけで満足している。

   【今年のキャンプ】

    この川が中荒沢川。
    左側はフリーサイトのキャンプ場であるが、雪祭りの日以外人が溢れることはない。
殆ど僕達の専用キャンプ場のようだ。
今は管理棟に天然温泉の風呂が完備されているので、何泊しても快適に生活出来るようになった。



  中荒沢川の魚止めの滝下。
右手の奥に魚道があるので遡上する岩魚も多い。
この小さい人は僕のテンカラ継承者、数日後5歳になった。
この小さい人がテンカラで釣り上げた25㌢の岩魚。


 【キャンプ場の風景】
   僕達がいつも利用するテントサイト
3張りのテントは僕達の物
右側には中荒沢川が流れている。
正面の山の下が銀山湖であり、銀山平の船着き場がある。
  炊事棟もトイレ棟も綺麗
です。

 





菅野君の小学校3年生の娘が本流でルアーで釣り上げた尺上の岩魚。
30㌢を超えるとこのように刺身にして食べることが出来る。
これはただ、ただ美味しいとしか言いようがない。
自分で釣って、その場で捌いて食してもらうのが一番かな。
一度食べたら忘れられない味だ。

2011年11月14日月曜日

高校でコンプライアンスの講演をしてきました。

今日は県内の高校で「市民社会とコンプライアンス」と題して講演を行いました。
高校2年生に向けてコンプライアンスを語ると言うことは、初めての経験でした。
社会人向けのコンプライアンスセミナーは日頃よく行っていますが、高校生にも考えてもらえるテーマはなんだろうかと思いまして、「法令遵守の難しさ」を前半のテーマとし、後半では「信頼」をテーマとしました。

コンプライアンスと信頼を結びつけて考えると言うことは、世間ではあまりなかろうかと思いますが、広い意味でのコンプライアンスを理解してもらうためには、信頼というキーワードで考えてもらう方がしっくり来ると思いました。

法律を守っただけでは信頼されない。
法津に違反したからといって信頼を失うとは限らない。
これは日本人の精神構造の問題と関係するテーマでもあるかもしれません。
私たちの考え方のに中には、法令遵守とは相矛盾する別の価値基準があって、それは普段意識していないルール、いや「空気」みたいなものであって、それが実際の法令の運用に大きな影響を及ぼしている現実があります。

現実の問題として、「許される法律違反」「許されない法律違反」「法律違反ではないが許されない行為」といったものがあって、人が生きるために必要なルールというものは、必ずしも法律や制度だけでなく、各人の心の中や社会全体の意識として存在するルールというものも無視できないという現実を、高校生の皆さんにも考えてもらいたかったのです。

何のための法令遵守か。
人はロボットではありませんから、法令という指令にただ従って生きているわけではありません。
我々は法に対してどのように向き合ってゆくべきか。
そういったテーマを将来考えてゆくスタート地点として、考えるきっかけの一つを提供させてもらいました。
これは、生きる力を独力で養っていただく試練の道を指し示すことでもあります。

最後に、「あなたはどのような人を信頼するか。」
また、「あなただけのルールは何か。」
という問いかけもしました。
これは私自身にとっても重大なテーマです。

私は普通の人よりも法律にくわしい人間ですが、100%の法令遵守をできる自信はありません。
また、日常的にズボラでいい加減なところもあります。
それでも私には、絶対に譲れない「自分だけのルールがあります。」
そのルールは、私にとっては法律よりもはるかに重要なものです。
それを捨ててしまったら、私は私でなくなってしまう。
それがあるから、私は今、お仕事を任せていただいているのだと思っています。

今回の講演が高校生の皆さんにとってどれほど有意義だったのか。
それは彼らの今後の人生において、私の言葉がどれほど影響したかということでわかることであって、今の私には見当もつかないことです。
ただ、私がこれまでの経験で蓄積してきた教訓を1時間に集約して話させていただきました。
私にとっては、非常に有意義な機会でした。

2011年11月9日水曜日

第五章 社会的責任の認識及びステークホルダーエンゲージメント(その2)

5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント

 組織の決定や活動はステークホルダーに対して何らかの影響を与えることになります。ですから、組織は自身に関連するステークホルダーについて特定しなければなりません。企業の場合、株主や従業員といったステークホルダーはすぐに特定できますが、ステークホルダーは必ずしも簡単に特定できるわけではありません。関係しているステークホルダーは、組織の決定や活動が自身に対して何らかの影響を与えることを認識していないということもあり得ますし、人間以外の生物などのように、そもそもステークホルダーとしての意思を現すことができない存在であるかもしれません。

 従って、組織は自らの決定や活動が、どのようなステークホルダーに対してどういった影響があるのかについて十分に考え、認識したうえでステークホルダーを特定することが求められます。こうして特定されたステークホルダーの利害は、必ずしも一致しているとは限らないので、組織はその利害がどのように自らの決定や活動と関連し、社会的責任としてどのように対応すべきなのかを検討しなければなりません。

 ステークホルダーと組織はその利害関係について積極的に双方向でコミュニケーションを行って、それぞれの利害や関心について理解することが必要なのはいうまでもありません。組織が積極的にステークホルダーと関わる中で双方が受け入れることが可能な部分を見つけ出すことができるように活動をするプロセスのことをステークホルダーエンゲージメントといいます。

 ステークホルダーエンゲージメントは、双方向のコミュニケーションとしての対話が基本となりますから、単なる広報活動とは異なりますし、発言することのない(できない)ステークホルダーであっても、その存在を無視することはできないものと考えられます。

 ステークホルダーエンゲージメント自体がまだ発展途上の概念であって、これからも大きく変貌するころがあるかもしれませんが、ステークホルダーエンゲージメントの中心が双方向の関わりであって、社会の持続可能性に関して必要なことであるという部分が変わってしまうことはありません。

釣り考 その10 テンカラ釣りを知る

      釣り仲間は高津区役所の加藤さんと言う人と親交していたが、この人がまた釣り
    に多才な人で、ルアーの他当時流行始めたFFにも造形深く、自作の毛鉤を見せてくれたが、リアルであり色彩豊かな毛鉤は芸術品のようだった。
    弟は新しもの好きで、真っ先にFFに飛びつきよく中禅寺湖などに行ってたな。
    僕は毛鉤には興味があったけれど、FF釣りには何故か全く興味がなかった、それは自分でも不思議だった。

    そんなある日、加藤さんが
                  日本にも古来からのテンカラと言う毛鉤釣りがある
    といって、テンカラ釣り概略を説明してくれたし、持っていたグラスのテンカラ竿や馬素と呼ばれている馬の尻毛で編んだラインを見せてくれた。
    加藤さんの持っていた3,3メートルのグラスのテンカラロッドに馬素を付けて振ってみたが、竿は重くグラス特有のしなりなので、これで渓流を攻めるとなるとかなり大変だなと思ったが、「日本古来の毛鉤釣り」と言う言葉が妙に頭に残ったので、調べて見る気になって紀伊国屋書店に行き、隈無く探したところ、

                冨士弘道さんの現代テンカラ

    と言う本を見つける事が出来た。

    その本を熟読して、テンカララインも毛鉤も自分で作ることが出来ると紹介されており、尚かつ今カーボンのテンカラロッドも販売されていることが判った。
    しかし、釣り道具屋に行ってもテンカラ釣りと言う言葉さえしらない店があり、カーボンのテンカラロッドはなかなか入手出来なかったが、何気に寄った小さな店の渓流コーナーの片隅に見慣れない竿が一本置き去りにされているのが目に入ったので、手にして説明書を読んだところ、何とカーボンのテンカラロッドだった。


    誰からも見向きもされなかったと思われるその竿のケースに貼付されている値段表の印刷も薄くなり、値段が読み取れない。
    店の人に値段を聞いたら、売れないから5000円でいいと言うので即購入。
    この竿がまた、調子といい重さといい僕の手にピッタリ納まった。
     
    それからはまずライン編みから始まったが、これだと言うのが出来上がるまで3年程の時を要したかな、また伝承毛鉤も現在進行形だけれども、そこそこ釣れるまで千本くらいは作ったかな。
    何回となく早戸川のリヴァースポットに通い、ラインや毛鉤を試した結果、渓流でも釣果を得るところに辿り着いた。
   
     当時のテンカラライン(馬素)












                                            
 
初めて買ったカーボンの
      テンカラ竿
  3,3メートル
  これは僕のテンカラ釣りの歴史であり大切な竿である。
テンカラ釣りを伝承する七瑠にもこの竿は伝えよう。
今は、あまり使う機会がなくなってしまった。

2011年11月2日水曜日

第五章 社会的責任の認識及びステークホルダーエンゲージメント(その1)

 第五章では、組織がどのように社会的責任を認識するかという点と、ステークホルダーエンゲージメントについて書かれています。この部分は、ISO26000の中でも特にわかりにくいところなのですが、この規格の中でのとても重要な部分となります。

5.2 社会的責任の認識

 組織は、社会や組織を取り巻くステークホルダーとの関係について常に認識しておくことが必要です。ステークホルダーの目的は組織との関係の中では利害がありますが、その利害は必ずしも組織が社会から求められている利害と一致しているとはかぎりません。したがって、組織はステークホルダーの利害がどのようなものであるか、その利害が社会に対してどのような影響を与えるものなのかについて考えておく必要があります。

 組織の決定や活動が社会に与える影響を考えるためには、法規制や契約に基づいて存在している強制力ある課題と、組織の社会的な責任に基づく強制力の弱い義務があります。強制力の弱い義務を考慮するためには、はじめに組織の社会的責任がどのようなものであるかについて定義付けされていなければなりません。第6章では具体的に7つの中核課題が示されますので、組織はステークホルダーと社会との関係の中で、みずからの社会的責任に対する課題を認識しておかなければなりません。

 組織自身が持つ影響力について、それがどのような範囲に及ぶものかを組織は認識していることが必要です。他の組織と関係を持つ場合には、相手側の決定や活動が社会やステークホルダーに対してどのような影響を及ぼす可能性があり、それがマイナスの方向に向かうことがないかという点については十分に検討しておくことが重要となります。

釣り考 その9 渓流釣りとの出会い(餌釣り)

  昭和59年に僕は高津署へ異動となった。
    そこで渓流釣りに出会った。
    同じ係に渓流釣りをする人が二人居たのだ、僕が住んでる津久井は30分も車を走らせれば,幾つもの渓流に行けるのに、目の前に何時も湖があったので渓流なんて考えても見なかった。
    二人の話を聞いてると、渓流釣りも面白そうなので二人に頼んで連れて行ってもらったところ、思う以上に奥が深いことを知り、嵌ってしまった。

    丁度竿もグラスロッドからカーボンロッドに変わり始めたころであったが、まだ高価だったカーボンロッドには手が出なかったのでグラスロッドでやっていた。
    源流やボサ川が多かった僕達は、専らチョウチン釣り主流だった。
    仲間の一人がカーボンロッドを買ったので、手にしたところ硬調子でありその軽さに魅入られ、僕も小遣いをはたいて4,5メートルのカーボンロッドを入手した。

    渓流釣りも慣れてきたので、地元の渓流へ一人で出掛けるようになり、そこそこの釣果もあり、また岩魚も山女魚も食べられることが魅力で僕は益々渓流釣りに呑めり込んで行った。

    ある日、早戸川の上流にある幻の大滝を目指して遡上し、形の良い岩魚を2匹釣り上げ更に遡上し、居そうな溜まりに振り込み流していたところ目印が止まってしまったので引き上げようとしたところ上がらない、根掛かりと思い上や横に竿を操作していたところ、何とズルズルと動き出した。
    何かが掛かっていることは判ったものの全く上がって来ない、横移動するばかり、0,8号のハリスでは無理すれば糸切れしてしまうので、動きに逆らわず少しずつ浅瀬に誘い込み、やっとの思いで岸の上げたところ、太めの大ハヤみたいな魚。

    こんな所にハヤは居ないはずなんだけどなと思いながら、その魚を取り上げたところ消えかかったパーマークが薄っすら見える、何と

                      銀化した山女魚

    体長は有に尺を超えている、たまに大山女魚が居るとは聞いていたけれど、仲間の誰も釣ったことがないので幻だと思っていたけれど、まさか自分が釣り上げるなんて、これは奇跡だ。
    僕は山の神に深く感謝し、即納竿。
    家に帰る前に弟の家に寄り、弟に大山女魚を見せ、帰宅した。
    塩焼きにして頂いたが、美味かったなー。

2011年10月26日水曜日

シルクロードの東端

 「日本」という呼称が記された墓誌が中国の西安で見つかったという報道がありました。

 この墓誌は、日本と百済の連合軍、唐と新羅連合軍が戦った、白村江の戦い(663)の頃に作られたものなのだそうです。この頃は、先の戦争の影響もあって、日本と朝鮮半島の関係は悪化していて、日本と唐との交流は主に東シナ海を越えて長江河口に至るルートが使われていました。

東シナ海の夕日 
          

 東シナ海を抜け、長江を100キロほど遡ったところに太倉という街があります。ここは古くからの港町で日本からの使節や各国の交易で賑わった町といわれています。いうなれば、シルクロードのユーラシア大陸側の東端ということもできるかもしれません。明の時代には鄭和がこの港から大航海に旅立っていきました。

 現代の太倉港は、上海まで50キロほどという地の利を生かして、大型船が接岸できる埠頭が整備され、ガントリークレーンが休みなく荷役をしている貨物港として発展しています。日本との間にも定期貨物航路があり、比較的短時間に貨物の輸送をすることができるようになっています。

太倉港のコンテナ埠頭 
                

 数年前に下関港から太倉港まで船で渡る経験をしましたが、数万トンもある大型船でも対馬海流を横切るには大きく揺れるのですから、きっと想像を絶するような命がけの旅路だったに違いありません。

釣り考 その8 相模川週末の夜釣り

 緑署に勤務した時、部屋に釣り好きが何人も居て、よく相模川へ大ハヤ釣りに出掛  けていたようだけれど、ハヤなどに興味のない僕は参加しなかった。
    ある週末(その頃隔週5日制が試験実施され)の金曜日、部屋でハヤ釣り大会を実施することになり、課長も参加すると言うので一人不参加と言う訳にもいかないので、不承不承参加した。
    仕掛けは鯉釣りのものと同じなので、新たな仕掛けを買い揃える必要はない、ただ餌が違っていた。
    練り餌だけれど、市販されている練り餌だけではなく、中にイカの塩辛を入れたり、日本酒で練ったりとそれぞれ違う練り餌。
    僕は、たかがハヤを釣るのにそんな餌なんか必要ないと思い市販されている練り餌だけを持参した。

    場所は相模川と中津川が合流する地点周辺、何度も来ている人は暗い中自分の場所をすぐ選択していたが、初参加の僕は場所取りさえままならない。
    やっと場所を決め、竿先に鈴を取り付け川の真ん中辺りに投げ、鈴が鳴るのを待つ。あっちこっちで鈴が鳴り始めたが、一向に僕の鈴は鳴らない、午後11時頃納竿となったが尺超えの大ハヤを何匹も釣った人が居る、因みに僕は坊主。
    この大ハヤは唐揚げにすると美味いそうで、皆釣ったハヤを持ち帰った。
    僕はハヤなど喰うものではないと思っていたので信じられなかった。
   
    その日坊主の釣りをした僕は、負けられない釣り魂が燃え上がり、その後ハヤ釣りに参加し、餌をそれなりに考案し、何時しか竿頭になっていた。
    喰うものではないと思っていた大ハヤは、唐揚げにすると本当の美味かったな。

    何時だったか大ナマズが掛かり、やっとの思いで釣り上げたが、ナマズも喰うものではないと思っていたのでリリースしようとした、先輩が「これはウナギより美味い」と言うので疑心暗鬼で持ち帰ったけれど、女房殿が気味悪がって料理してくれない、僕だって料理の仕方は知らないので、津久井湖に逃がそうとしたところ、隣の中村さんの旦那がそれを見て、「捨てるならもらえないか、美味いんだよ」と言うので喜んで差し上げた。

    数日後、中村さんが、油が乗っていて美味かったと言ってくれたのが救いだった。
    それ以外にも、親父や弟を誘って土曜日の夜にその場所へ釣りに行ったが、ある時深夜の帰り半原の県道432号線で、暴走族の集団に出会ってしまった(暴走族が最盛期の頃だった)たまたま集落に入る脇道があったので、その道の回避したとこ
    ろ上手い具合に、集まっていた暴走族の後方の出ることが出来たので事無きを得た。以来相模川での夜釣りは辞めたし、自分も県警本部に異動となったので、丁度良い引き際だったのだろう。

つづく

「加担」について

 第4章には、「加担」について触れられた部分があります。ISO26000で言う加担とは、社会や経済、環境に対してマイナスの影響を及ぼすことになることに対して、直接的、または間接的に関係してしまいそのマイナスの影響を助長したり支援したりすることになってしまうことをいいます。

 組織自らが人権侵害や環境悪化を招く行為を行っていなかったとしても、関連する別の組織や調達先でそういった行為があれば、そのことを知っていたかいないかに関わらずそれは「加担」していることとなり、全体としてはマイナスの影響を与えることとなります。

 子ども達が使うサッカーボールを学齢期の子ども達を含めた低賃金労働者が作っているといった、いわゆるスウェットショップが問題となった頃から欧米では大きな注目を集め不買運動なども発生し、ナイキやモルテンといった多国籍企業は下請け工場などの労働改善を行ってきました。

 また、アメリカでは金融規制改革法の中で、児童労働によって採掘されていたり、鉱物の売却利益が武装勢力の資金源となっていたりするなどの恐れがある鉱物資源いわゆる「紛争鉱物」が取引されることによって、結果的に紛争地域の武装集団による虐殺や略奪、性的暴力に結果的に加担することになってしまうということから、そういった鉱物の情報を開示することが義務付けられました。

 これまでは、日本では児童労働や搾取といった問題にあまり関心がなかったのですが、今後は自らのサプライチェーン全体をしっかり管理し、知らず知らずのうちに「加担」してしまうことのないように注意する必要があります。

2011年10月19日水曜日

雇用促進税制の適用について


雇用促進税制という税額控除を受ける制度が施行されております。2名以上の雇用をお考えの事業主の皆さまはご検討ください。

1.雇用促進税制とは
 雇用促進税制とは、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの期間内に始まる事業年度(以下「適用年度」)において、
 雇用者増加数が5人以上(中小企業では2人以上)、
かつ
雇用増加割合(注)が10%以上
となる場合(下記事業主要件を満たす事業主であること)、
 雇用増加数1人あたり20万円の税額控除を受けることができるものです。
(但し、当期の法人税額の10%(中小企業では20%)が限度)

2.事業主要件
(1)青色申告書を提出する事業主であること
(2)適用年度とその前年度に、事業主都合により離職者がいないこと
(3)適用年度に雇用保険被保険者の数が5人以上(中小企業では2人以上)増加し
   かつ、従業員数が10%以上増加すること
(4)適用年度における給与支給額が、比較給与支給額(注)以上であること
  注)比較給与支給額とは、
     (前年度の給与支給額)+(前年度の給与支給額)×雇用増加割合×30%
  雇用増加割合=(適用年度の雇用増加数)/(前年度末日の雇用者総数)
(5)風俗営業等(注)を営む事業主ではないこと
  注)風俗営業及び性風俗関連特殊営業

3.手続き
(1)事業年度開始2ヶ月以内(注)に雇用計画(目標の雇用増加数等)を作成し職安に提出します。
 注)平成23年4月1日から8月31日までの間に事業年度を開始する場合には、10月31日までに提出することが必要です。
(2)事業年度終了後2ヶ月以内(個人事業主は3月15日まで)に雇用促進計画の達成状況の確認を労働局(または職安)に求めます。
(確認を求めてから1ヶ月程度をかかる。確定申告期限に間に合うように留意)
(3)確認済の雇用促進計画の写しを確定申告書に添付して税務署に申告します。



第四章 社会的責任の原則(その3)

今回は、社会的責任の原則のうち「ステークホルダーの利害の尊重」「法の支配の尊重」「国際行動規範の尊重」「人権の尊重」の四つについて説明します。

4.4 ステークホルダーの利害の尊重

組織は、自らを取り巻いているステークホルダーとの対話を通してその利害を尊重することが必要ですが、そのためにはまず関連するステークホルダーを特定しなければなりません。特定されたステークホルダーの利害は必ずしも同一の方向を向いてはいませんし、場合によってはその利害が対立することもありえます。ですから、ステークホルダーの主張と組織の関係は常に認識されていなければなりませんし、それが社会的責任との関係でどのように作用するのかを見極めていなければなりません。


4.5 法の支配の尊重

法の支配とは、いかなる組織や個人であっても法によって支配され、それを超越することはできないという考え方で、現代民主主義の根幹となる考えのひとつです。組織は、活動や決定が、その活動する地域において適用されている法的な枠組みに照らして問題なく遵守されているかを確認し、定期的に見直す必要があります。これは、組織の社会的責任としては、最も基本的な事項のひとつです。


4.6 国際行動規範の尊重

組織が活動する地域によっては、法制度を遵守することだけでは国際行動規範で求められている水準に到達しないこともあります。時にはその地域の法が国際行動規範と対立することになる場合もあります。こういった場合には、組織はできる限り国際行動規範を尊重して行動することが重要です。また、国際行動規範と整合しない活動を行う組織の行動には加担してしまうことのないように、常に確認をしていなければなりません。


4.7 人権の尊重

国連の世界人権宣言をはじめとする国際人権章典で規定される人権は人々がそれを自ら放棄することもできず、権力であってもそれを人々から奪うことは認められないという絶対的なものであるということができます。人権を尊重することは、全ての組織が行うべきことであるとされています。しかし、実際に組織が活動する領域では、これらの権利が充分に守られていなかったり、意図的に侵害されていたりする場合もあります。こういった地域においては、組織は人権が尊重されていない状況を利用したり、加担してしまったりすることのないように、常に注意をはらっておくことが求められます。

釣り考 その7 再び釣りへ

  僕は結婚し、相模湖の町営住宅に5年住んだ後、津久井湖のある津久井町に戸建ての家を買った。
    目の前に津久井湖があるのに、釣りに行かない手はない。
    そして、再び釣りへ。
   
    復活したのは野鯉釣り。
    スピニングリールや竿を何組も買い揃え、いざ津久井湖へ。
    仕掛けは吸い込みを使う鯉釣りだから、竿先に鈴を取り付け遠くへ投げ込み竿立てに置き、後は鈴が鳴るのをひたすら待つ。(待ちの釣りだな)

    待つ間読書も出来るし物思いに耽ることも出来る、何とも長閑な釣りだが、竿先の鈴がチロチロ鳴り出すと竿前に行って、竿尻をそっと握り掛かる時を待つ。
    これがまた何とも言えない楽しい時間、鈴の音を聞きながら、今彼奴はこの辺まで喰っているだろう、もう一口食いつけと心で彼奴に呼びかける、瞬間竿先が半月に反る、一気に竿を引き上げリールを巻き込む、引きの強さや泳ぎ方で大体何が来たのか判る。

    鯉の場合は必ず沖へ走る、鯉は利口な魚だから釣られない為、湖底の木の根に巻き付こうとする、巻き付かれたら上げることはほぼ無理なので、兎に角一気にリールを巻くしかない、それでも2尺を超える大物はこっちがやられてしまう。完敗。
    野鯉が掛かるのは希なことで、殆どは40㌢くらいのニゴイばかり、野鯉より先にニゴイが餌に寄りつくのでどうしてもニゴイが釣れてしまう。

    昔はニゴイなんてそんなに居なかったはずなのに、どうしてこうもニゴイが多くなってしまったのだろう。
    何年も鯉釣りに通ったけれど、とうとう2尺超えの野鯉を釣り上げることは出来なかった。

つづく

2011年10月12日水曜日

第四章 社会的責任の原則(その2)

今回は、社会的責任の原則のうち「説明責任」「透明性」「倫理的な行動」について説明します。

4.1 説明責任

組織が行う活動やその意思決定は、なんらかの形で社会や環境に対して影響を与えることが考えられます。そういった影響について組織は説明責任を担うことが求められます。日常の活動や決定であっても説明責任が生じますが、環境に影響を与えるような事故などを起こしたり、社会にも影響を与えるような事態が発生したりした場合も説明責任を負うべきです。

4.2 透明性

組織はその活動や決定が社会及び環境に与える影響について透明性を求められます。そのために、組織はそれぞれの活動を担当する部門などの単位で、その責任や分担、経費の管理などの一定の情報を確実に開示することが必要です。

4.3 倫理的な行動

組織が活動や意思決定を行う場合には、正直・公平・誠実という3つの倫理観に照らして問題がないかどうかを充分に検討したうえで行うことが必要であるとされています。組織が倫理的な行動を促進するために、「統治構造の構築」、「倫理的行動基準の制定」、「利益相反の予防監視メカニズムの導入」、「違反通報制度整備」など、組織の行動の規範となるべき基準を作成することが必要なのです。

釣り考 その6 休釣期間

      高校生になってからは、部活や高校の仲間達との遊びが忙しく釣りからは遠ざかってしまった。
    働くようになってから1年に2,3度釣りに出掛けたが、専ら夏の夜釣りだった。
    安月給だけれど給料を貰っていたので、釣り道具もそこそこの物は持っていた。

    夜釣りは明かりが必要だが、今みたいに手軽な照明器具はないから、会社に転がっていたバッテリーやフォグランプを貰って、それを照明にした。
    浮子は電気浮子だから投げ込んでしまえば、後は明かりなしでも充分釣りは出来る。深い入り江に弟と行った時、あまりにも掛からないので暇を持て余しフォグランプで対岸を照らしていたところ、「眩しいじゃねえかこの野郎」と怒鳴られて驚いたな、向こう岸にまさか人が居るなんて思いもしなかった。

    明かりもなく真っ暗の中、居眠りしていたところ弟が「兄貴の浮子が見えねえぞ」と言うので、慌てて竿を上げたところ上がらない、何だ根掛かりかと思ったら微妙に動くので湖底に沈んでいる土左衛門でも引っかけたかなと思いつつ上げ続けたところ丸まったものが上がって来た。
    土左衛門でなくホッとしたが、何だか識別出来ないその丸まった物も気持ち悪かったけれど、取り敢えず岸に上げたところ、ニョロニョロと動き出す、よくよく見たらウナギだった。
    この戦利品は家に持ち帰り、親父に蒲焼きにしてもらった。
    その後警察官になったので釣りどころではなかった。



  【夜釣り場所】
   僕達はこの入江の手前で夜釣りを 楽しんだ。
 反対側に居た人はどこからあの場に 降りたのだろう。

つづく

2011年10月6日木曜日

PSCマークのないライターの提供が違反

使い捨てライターを使用した子供の火遊びによる火災の発生を受け、消費生活用製品安全法施行令の一部が改正され、平成23年9月27日以降はPSCマークの表示がないライターの製造、輸入、販売が禁止されました。

 該当するライターとは、「燃料の容器と一体となっているものであって、当該容器の一部にプラスチックを用いたもの」を意味しますから、該当しないライターもありえます。

 パチンコ店における賞品(景品でなく)として安全基準に満たないライター等を提供することは、消費生活用製品安全法に違反することとなります。 (一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。)

 P店における賞品提供が同法の販売に該当する旨は担当官庁に問い合わせて確認しました。
 コンプライアンスを考えれば、基準を満たさないライター等は全て適切に廃棄するべきところです。

 安全基準を満たしているかどうかの区別は、ライター本体のPSCマークの表示の有無で確認します。

 詳しくはこちらへ

 http://www.meti.go.jp/press/20101227003/20101227003-3.pdf

2011年10月5日水曜日

釣り考 その5 ワカサギ釣り

      世の人は、ワカサギ釣りは冬の風物と思っているようだけれど、これは全くの思い違いだ、ワカサギは一年中釣れる。
    僕は夏休みによくワカサギを釣りに行った。

    ワカサギ釣りの餌は「サシ」と呼ばれるウジ虫なので、サシを作るのは夏が絶好の時季。
    傷んだご飯を草むらに置いておくだけで出来る、ハエがご飯に卵を産み付けるので、数日後そのご飯を掻き分けるとウジ虫が無数に蠢いている。
    枯れ木の枝でウジ虫を掴み空き缶に入れてサシが出来上がりだ。

    そのサシで結構ワカサギが釣れたけれど、喰った記憶がないので喰わなかったのかなサシがサシだけに何となく抵抗があったのかな。
    一度だけ親父と弟と一緒に嫌と言う程ワカサギを釣ったことがある。
    それは冬の終わり頃だったかな、相模湖ダムの放水口の溜まりにワカサギが異常発生した情報を得たので3人で釣りに出掛けた。

    その場所は、小原宿の途中にある望川亭の横の崖を100メートルくらい降りた所で立ち入り禁止場所だから、朝一でその場に行き、反対側にある管理棟の監視員が起きないうちに釣りをする。
    監視員に見つかると出て行け放送をされるので、放送が入る前の小一時間が勝負。
    餌なんか付けず兎に角溜まりに仕掛けを投げ入れ素早く上げる。

    要するにただ引っかけるだけ、面白いようにワカサギが掛かる、掛かったワカサギはその場に放り投げて置く、そして出て行け放送が入ると納竿し、足元の岩場に転がっているワカサギを魚籠に入れ退散。
    あの時3束か4束(1束は100匹)は釣ったので、その晩の食卓はワカサギの天ぷらや酢〆で賑やかだった。
    翌年以降は釣れると聞かなかったので異常発生はあの年だけだったのかな。

  【相模湖発電所】
    下の白いコンクリートの建物が管理棟で その下が排水口になっている。その右側に 大きな溜まりがあり、そこにワカサギが異 常発生した。
 僕達は反対側の垂直に近い崖 を下り降り ワカサギを釣った。
 だけどよくあんな危険な場所へ親父は平気 で連れて行ったな。
    今日はそんな偉大な親父を偲んで一人バーボンを傾けるとするか。
   ワカサギとは、「公魚」とも書くそうだが、それは常陸国麻生藩が徳川11代将軍徳川家斉     に年貢としてワカサギを納め、公儀御用魚とされたことに由来するそうだ。


第四章 社会的責任の原則(その1)

 第4章では、社会的責任の目的という観点から7つの原則が述べられています。

 組織が社会的責任について自覚し、そのための活動を行う目的はそれぞれの組織の信用や評判といった部分を良好に保つためという側面もありますが、実は、それらの活動の究極的な目的は「社会の持続的な発展に貢献すること」です。社会的責任は、現在の社会で必要とされるニーズを満たしながら、将来の世代に対してもそのニーズを満たすことができる社会を実現するために必要とされているのですから、個々の組織が持っている組織独自の目的に関わらず組織が社会的責任に取り組むことは、何らかの形で持続可能な発展に関与することになるのです。

 ISO26000は組織が社会的責任に取り組むための手引きですから、組織が社会的責任に取り組む必要があると考えた時に、どのような観点から取り組むことがより良いかについて多くの提案がなされ、さらに組織が尊重するべき、「説明責任」「透明性」「倫理的な行動」「ステークホルダーの利害の尊重」「法の支配の尊重」「国際行動規範の尊重」「人権の尊重」という7つの原則が掲げられています。

2011年9月28日水曜日

従業員がうつ病になったら

 従業員がうつ病になったら会社としてどうすればよいでしょうか。

【うつ病って何?】

「うつ病」が話題になっていますね。「うつ病」ってなんでしょうか。
やる気が出ない。抑うつなどのうつ症状が出る病気と言われていますね。うつ症状が現れる病気にはうつ病以外にもあるようです。これには、以前は精神分裂と言われていました統合失調症をはじめ、双極性障害(以前は躁うつ病)、パーソナリティ障害(以前は性格障害)があります。対処法はその原因により異なるようです。

ここでは、最近多いと言われる「職場におけるうつ病」に焦点を当ててお話しします。
うつ病には、従来型うつ病(「メランコリー親和型うつ」)と現代型うつ病(「ディスチミア親和型うつ」)に分類されています。従来型うつとは、真面目で几帳面、仕事熱心な方で40代50代の年配の人がなる傾向があり、現代型うつとは、逆に几帳面でもなく仕事熱心でもない方で20代30代がなる傾向のようです。


【職場での対応は?】

それでは、職場での対応としてどうすればよいでしょうか。厚労省では、指針を出して、職場での予防と早期発見に力を入れています。「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」(厚労省)において、4つのメンタルケアを提唱しています。
4つのメンタルケアとは、

①労働者自身がメンタルに対する理解やストレスへの対処を行う(セルフケア)、

②職場として対応する(ラインケア):教育、相談窓口の設置等、相談窓口の設置など、

③事業場内産業保健スタッフ等によるケア、

④事業場外部資源によるケアの4つのケア:EAP(Employee Assistance Program)

などの活用のことです。


【職場ではどんなふうに現れるの?】

早期に発見するには、職場における行動として現れるものと、身体に現れるものがあります。行動面としては遅刻、早退、欠勤が増えることや、能率の低下やミスが増えること、それに伴い残業時間が増え、もめごとが増えることなどがあります。身体面には、めまい、頭痛、吐き気、不安感、不眠など現れてきます。


【発生したら】

うつ症状が発生したら、本人との面談を行い、職場上長や総務人事担当などが相談窓口となり本人との面談を行い、場合によっては産業医による健診など受診を勧奨します。その結果をみて、一般的には休職という流れになります。


【休職させる場合は】

休職させるか否かは主治医の診断書や会社指定の医師の意見などを参考に会社が判断します。休職することになった場合には、連絡方法や会社側窓口の設置、休職期間など確認しておく必要があります。
そのためには事前に休職させる場合の対処を休職規定として設けておくことが肝要です。


【復職する場合は】

病気が改善し、復職する場合には、本当に復職が可能なのかを会社として見極める必要があります。復職したが従来通り仕事をすることができない場合には、また休業となり、繰り返すことになります。主治医の診断書には本人の意向やご家族の意思が反映されている場合があるため、主治医の意見だけで復職を決めるのではなく、産業医や会社の指定の医師の意見も取り入れることが大切です。

次に、生活状況がどうなのか、仕事をさせてみて本当に可能なのかをみるリハビリ勤務などを検討します。その際には職場での対応方(リハビリを復職とみなすのか休業とみなすのかなど)を復職規定などで予め決めておくことが大切です。

従業員がうつ病にならないための予防策、なった場合の対処、休職や復帰するときの対処など会社が決めることは多々あります。皆様の会社ではこれらを整理されておられますでしょうか。



釣り考 その4 ブラックバスがやって来た

   6年生だったか中1の頃だったか定かではないが、相模湖にブラックバスと言う外来種の魚が放流されたと仲間内で噂になった。
    この魚がどんな魚で、どんな釣り方をするのか誰も知らなかった。
    只、美味い魚だと言うことだけは、しっかり伝わっていたので興味があり、釣ってみたいとは思っていたが、その前に釣り方の知識を輸入しなくてはならない。

    現在のようにインターネットなどと言う便利なものはない時代だから、何処かで情報を入手しなくてはならない。当時相模湖に漁協などの組織はなかったので、取りあえずボート場で働く人に聞いてみたが、そこではブラックバスの言葉さえ判らなかった。
    僕達釣り仲間は学校でも放課後でも、勉強なんか二の次でブラックバスの釣り方論議が沸騰していた。
    ブラックバスと言う魚を見たこともないのに、とても滑稽な話に夢中になっていた。

 そんな或る日、一番上の従兄弟に会ったら「いいもの見せてやるから家に来い」と誘われ行ったところ、庭に金盥が置かれ、その中に今まで見たこともない魚が居た。大きさは尺上で色は濃い緑、野鯉と鮒の中間くらいの体型、何よりも口が馬鹿でかく鋭い歯が無数に生えている。

    僕は一瞬「ピラニヤか」と思った(ピラニヤだって見たことはないが知識では知っていた)。
    従兄弟は「これがブラックバスだ」と教えてくれた。
    僕は驚いた、どうして従兄弟はブラックバスを釣れたのか、従兄弟はアメリカに行ったことのある友達から知識を得て釣ったらしい。

    釣り方について従兄弟は、テグスは3号、ハリスは鯉針、餌はドバミミズ、棚は底と教えてくれたので、その日の内に仲間に教え歩いた。
    従兄弟は、「明日洗いにして喰うから来い」と言うので翌日の夕方従兄弟の家に行ったところ、ブラックバスの洗いが出来ていた。
    喰ってみたら、臭みはないし身は歯応えがあり、鯉より美味いと思ったし、フライパンで蒸し焼きにしたのも美味かったな。

    僕は半ドンの土曜日の午後、仲間と誘い合ってブラックバス釣りに出掛けたけれど、その日は誰も釣り上げることは出来なかった。
    暫く通った甲斐あって僕は、とうとう待望のブラックバスを釣り上げた。
    引きは、鯉より強くよく走り回り竿が折れるかと思ったが執念で上げたけれど、針を外す時、この歯で食いつかれるんじゃないかと不安になったが何事もなく針を外すことが出来た。
    形は従兄弟が釣ったのとほぼ同じだった。
    僕は喜び勇んで戦利品を家に持って帰ったが、母は気持ち悪がって料理拒否されたのでそのブラックバスは我が家の食卓に上ることはなかった。

    ブラックバスが在来種の魚の生態系を悪化させるなんて、この時は思っても見なかったが、今は憂いている。僕の聖地である渓流も少なからず侵されているんだ。
    あの時はブラックバスに輝きめいたけれど、今は駆逐したい。
    ブラックバスに責任はないんだ、皆馬鹿な人間が悪い。
    ブラックバス釣りは一時の熱病みたいなもので、いつしか話題にもならなくなり、誰も釣らなくなり、仲間内では忘れられた魚となった。
    しかし、20年くらいの時を経てスポーツフィッシングとして復活し、今では相模湖でも津久井湖でも主流の釣りにのし上がった。
    在来種は怯えて肩身の狭い思いをしているのかな。

   ブラックバスは、1925年に実業家赤星鉄馬が芦ノ湖に政府公許のもと試験放流したのが最初と 言われている。
  1945年に進駐軍によって相模湖や津久井湖に部 分拡散されたと記録されているが、相模湖でバスが 確認されたのは昭和30年代だったし、津久井湖は 昭和40年代である。

    僕は昭和30年代前半、相模湖公園で野営をしていた進駐軍に食料をもらったことはあるが    
 ブラックバスを湖に放流したなんて話は聞いたことはないし、町の人からも聞いたことはない。    僕が初めてその名を耳にしたのは、昭和30年代半ばであったことは間違いない。         在来種の魚しか見たことのない子供には、この魚体は恐怖だったな。
つづく

第三章 社会的責任の理解(その7)

3.4  国家における社会的責任

 ISO26000の中では、規格が国家の機能を一部でも代替することはないと規定せれています。この部分には、その理由が書かれています。同じ人権を守るということにしても、それは国家の義務であるからこの規格で扱う社会的責任とは異なっているということが述べられています。

 従って、規格自体が何らかの法的な規制となって組織に何らかの義務を課すということはないということになります。しかし、組織はそれでこの規格と向き合う必要がないと考えることはできません。

 一つには法規制が行われる際の基準のひとつとして参考にされることが挙げられます。今後、環境や雇用などの分野ではサスティナビリティに関する法規制が増加していくことが予測されますが、その際国際規格であるISO26000が参考にされることは十分に考えられます。特に、規格策定にあたっては多くの途上国も参加しており、これまで不十分であった環境規制や雇用問題の対応に応用されることもありえます。

 また、法令による直接的な規制がなかったとしても、組織が行った活動や決定に関して社会からの評価についても、組織は考慮しなければなりません。国家による規制がなかったとしても、法規制ではないソフトローの一部になることは考えられます。また、組織が自らの活動や決定について説明する際の指針のひとつともなるのです。

2011年9月21日水曜日

第三章 社会的責任の理解(その6)

3.3.5  社会的責任と持続可能な発展との関係

 社会的責任と持続可能な発展との間には、非常に密接な関係がありますが、これらは同じものではありません。

 持続可能な社会という概念そのものは、1980年代の初めにはすでにありました。それが、世界的に大きな注目を集めたのは、1987年の「環境と開発に関する世界委員会」において報告された「我ら共有の未来」の中で使われたことによります。持続可能な発展とは、地球上の生態系が支えることのできる範囲内で生活していくことと、将来の人々のニーズを脅かすことにならないようにしながらも、現在の社会におけるニーズは満たしていくことを意味しています。持続可能な発展のためには、成長の回復とその質の変更、雇用・食糧・エネルギー・水・衛生など基本的ニーズの満足、人口の伸びの持続可能なレベルの確保、資源基盤の保護と強化、技術の方向転換とリスク管理、環境と経済を考慮した意志決定、が必要であるとされていますが、これは経済、社会、環境という3つの側面がそれぞれに関連し合っているということにほかなりません。

 一方で、社会的責任は持続可能性とは密接に関係していますが、こちらは持続可能な発展をしていくためにそれぞれの組織が取り組むべき責任のことをいいます。組織はステークホルダーとの係わり合いの中で、持続可能性を常に考慮しながら組織としての活動を行うことが重要なのです。ISO26000という規格で捉えられている社会的責任と、企業の社会的責任(CSR)との大きな違いがここにあります。CSRは企業の社会的責任を通じて、企業にとっての利益や企業価値工場を目指すことも含みますが、ISO26000では、特定の組織の持続可能性を考慮されているものではなく、社会全体の持続可能性に焦点があてられています。

 だからといって、個々の組織は自己の利益や価値の向上だけを考えることだけでは、その目的を達することはできません。なぜなら、社会的責任は常に持続可能性を考慮している組織の活動や決定に影響を与えることになるからです。

釣り考 その3

 前回、ドイツ鯉のことで一寸道草を食ってしまったようなので、これから親父が教えてくれた「置き針釣法」について話そう。
  この釣法は、釣りと言う概念より「漁」と呼んだ方がいいのかもしれない。
  50メートル程の強いタコ糸が道糸となり、ハリスはウナギ針で10本程度使用する道糸の先端に拳大の石を括りつけ、そこから1.5メートルくらいの間隔でウナギ針を10本結わえる、餌は大きめのドバミミズ。
  全ての針にミミズを付け終えると石の括られていない側の糸先を岸辺に生えている木に結わえ付け、先端石を湖に投げ込む。
  投げ込む時期は夕方、そして一晩置いた早朝それを引き上げる。
  ただこれだけのことである。
  引き上げると針の7割くらいに、野鯉やウナギが掛かっているが、ウナギが掛かるのは時々だった。
  ウナギは当然背開きにして蒲焼きで喰う。
  野鯉は鯉コクにしたり、アライにして喰う他、輪切りにして味噌漬けにして保存食とした。
  慢性食料不足の時代、随分助かったと思う。    
    この置き針釣法は、親父の友達が投げる時の不注意で針の一本がその人の足に掛かり大怪我をしたことがあったので、僕はやらせてもらえなかった。

    この置き針釣法には、投げ方に秘訣があるようだった。
    ピッチャーのような投げ方では駄目らしく、上に向かって遠投の要領で投げるようだ。
    水平に投げてしまうと針掛かりを起こすようだ。
    先人は色々工夫をしたのだろう。
    機会があったら津久井湖でやって見ようかな。
      ( 置き針釣法とは、はえなわ漁法なのかな)

   この木の根本にタコ糸の逆先端を結わえ付けて沖合に仕掛けを投げる。
 当時このボートはなかったのでボート の遙か先まで親父は投げたな。
 この木の上に非舗装の県道があり、更 に5メートルくらいの高台に我が家があった。

つづく

2011年9月14日水曜日

第三章 社会的責任の理解(その5)

3.3.4 社会的責任の統合

 社会的責任は、どうしても企業が行っている慈善事業のように組織内での日常業務とは切り離された別のものとして認識さやすい傾向にあります。確かに、組織が行う慈善事業が社会的課題の改善に大きく寄与することは間違いありません。しかし、慈善事業を行っていても日常の活動の中で発生する決定や行動が社会的責任を考慮しないものであったとしたら、社会に対してマイナスの影響を与えることもあります。

 したがって、組織のあらゆる部門において日常的に発生している決定や行動には説明責任が求められていることを理解しておく必要があります。社会的責任は、組織の決定や行動について、その意思決定が行われるあらゆる段階で判断の中心的課題のひとつとして機能していることが必要なのです。

経営悪化に伴う整理解雇を実施する場合の一般的な手順


社会保険労務士 富田保宏

 東日本大震災や円高など経営に与える影響が多いご時世です。会社を維持しているためには、避けて通ることができない事態として雇用調整が必要な場面があると存じます。この場合には、後々問題とならないための順序というものがあります。
 順序には、一般に残業規制などの経費削減の実施、新規採用を控える、昇給停止や賞与の削減、配置転換や出向、休業の実施、希望退職の募集等があり、最終的な手段としての整理解雇があります。整理解雇の4要件と呼ばれる判例が、この順序を考慮すべき背景にあります。

【整理解雇の4要件】
①人員削減の必要性
②解雇回避努力
③被解雇者選定の合理性
④労働組合等との協議・従業員への説明
まず、

【残業規制を検討する。】
 経費削減として、労働時間管理を徹底して、時間外労働の削減や抑制を図ることを行います。ムダな残業をしていないかを各部署、職場にて見直しを図りましょう。
 また、残業の事前申請制の実施。または残業を許可制にすることも必要です。本当に必要な残業なのかを職場内で従業員を入れて判断し、見極めましょう。従業員全員に意識化を図ることも大切なことです。

次に、

【新規採用を控えることを検討する。】
 採用取消にあたっての注意点があります。内定は、始期付解約権留保付労働契約といって、業績悪化を理由とする取消は従業員と同じ扱いとされます。規採用を不可能ないし困難であり、かつ内定当時予測できないものであることが要請されています。

次に、

【昇給停止及び賞与の削減を検討する。】
 経営状態によりこれら対応が可能な規定となっているか、就業規則や賃金規程を確認しましょう。昇給停止をする場合は、賃金カーブが中だるみをしないような配慮をしましょう。経営者自らが率先して、役員報酬の削減を行うことも大切なことです。

次に、

【社内での配置転換や関連会社への出向を検討する。】
 就業規則(異動)の規定を確認しましょう。注意点として、転籍は個別同意が必要となることがあります。

次に、

【休業の実施を検討する。】
まず、就業規則(休業手当)の規定を確認しましょう。中小企業緊急雇用安定助成金(雇用調整助成金)を活用しましょう。これを用いたか否かを後々問題となった場合(裁判)には問われることになります。

次に、

【非正規従業員の雇止めや雇用契約解消を検討する。】
 原則として契約期間満了での退職(雇止め)を基本に考える。
 期間途中での解雇は、正社員より簡単ではなく、やむを得ない事由がなければ途中解雇はできません(労働契約法17条)。

次に、

【希望退職の募集を検討する。】
 正社員の雇用削減手順は、①希望退職、②退職勧奨、③整理解雇の順です。
 希望退職と退職勧奨は、解雇ではなく合意解約です。
 検討課題として、対象者の範囲、募集人員、応募期間、年次有給休暇の買上げの有無等がありましょう。

次に、

【賃金カットの実施を検討する。】
  労働契約のやり直しであり、個別同意が必要となります(労働組合があれば協約に従うことで個別同意は不要)。
  就業規則による不利益変更の対応が必要となります。この場合の留意点として、①労働者の受ける不利益変更の程度、②労働条件の変更の必要性、③変更後の就業規則の内容の相当性、④労働組合等との交渉の状況その他就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであることが求められます。

次に、

【退職勧奨を検討する。】
退職勧奨では、希望退職の募集時と同様な検討課題があります。

最後に、

【整理解雇を検討する】
となります。


釣り考 その2

~ 親父が教えてくれた置き針釣法 前編 ~

    小学校3年生の時、僕達一家は相模湖の対岸にある戸建ての家に引っ越した。
    そこは、相模湖の湖岸を走る県道の前で、嵐山の登山口となる脇で県道から5メートルくらいの高台に位置し、相模湖が一望出来る場所であり、いつでも釣りが出来る理想の家だった。
    ただ、家の下は急な崖になっているので僕や弟が釣りをするのは、家から200㍍程東に行った船着き場のある片隅だった。
    そこは小さな湾になっていて、上に橋が架かっている。橋の上から湖面を見ると時々1メートルを超える野鯉が群れをなして悠々と泳いでいるのを見たことがある。
僕達は、
 「あんなのが釣れたらどうしよう」
  と恐怖に戦いたもんだが、考えてみればこんな粗末な仕掛けにあの鯉達が掛かる訳がないのに、その時は真剣に掛かったことの恐怖しかなかった。
その場所は野鯉がかかる場所でよく鯉が掛かったけれど、10匹に一度くらいの割合で「ドイツ鯉」 
       と呼ばれている鯉が掛った。  (こんな立派になった嵐山橋)


    ドイツ鯉は普通の鯉と殆ど同じ姿ではあるが、鱗に特徴があった。
    鱗が極端に少なく鱗が側線付近一列に不規則に並んでいる、そして体色も野鯉より金色っぽい不思議な鯉だったな。
    初めてドイツ鯉を釣り上げた時はなんだか気味が悪くて掴めなかったけれど、大人からこの鯉の話を聞いてからは、このドイツ鯉釣りに燃えた。
    しかし、何時の時期に誰が相模湖にドイツ鯉を入れたのだろう。
    そして今、相模湖でドイツ鯉が釣れると言う話しを聞いたことがない。
    今はもう幻の魚になってしまったのだろうか、それならもう一度挑戦してみたいな。
   
    インターネットで調べたらドイツ鯉の解説があった。

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    鏡鯉(Mirror Carp)
 全身を鱗で覆われた真鯉に対し、鱗が極端に少ないものをドイツ鯉と呼びます。
 その中でも鱗が側線付近一列に不規則に並んでいるものを鏡鯉といいます。体型
 は全長の割には体高が高く、全体的に丸みを帯びた感じがします。鱗は不規則に
 並んでいるだけではなく大きさも不均一なため、日本人の目から見るとかなり奇
 異な感じを受けます。これはヨーロッパにおける品種改良の結果生まれた品種で
 す。
   革鯉(Leather Carp)
 同じくドイツ鯉の中でも鱗がほとんどないものを革鯉といいます。食用とする目  的で、より鱗のない鯉をヨーロッパで品種改良した結果生まれたものです。日本  ではごく稀に鏡鯉に近いものを見ることがありますが、この革鯉は見ることがあ  りません。それは日本にドイツ鯉を移入した際に、日本の鯉との交配がなされた  ため鱗が入っているようです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

つづく

2011年9月7日水曜日

釣り考 その1

釣りを始めたのはいつ頃だろうか、確か小学校1年生の頃だと記憶しているので、もう50有余年になるんだな。
今は究極のテンカラ釣りが自分の到達点だったと思っているが、そこへ辿り着くにはどんな釣り変転があったのか紐解いてみよう。

1 釣りを始めた時期

    僕の誕生と時期を同じくして「相模湖」と言うダム湖が完成した。
    そして、当時僕は相模湖の対岸に位置する藤野町の吉野と言う地域の相模湖を目の前にした集合住宅に住んでいた。
    昭和20年代後半で食料は常態として不足をしていた頃だったので、親父はその食料不足を補うため、相模湖で野鯉釣りをしていたようだ。
    家の前に5メートルくらいの竹の延べ竿が一本置かれていたのを、うっすら覚えている。親父は多分その竿で野鯉釣りをしていたのだろう。

    釣り場は天垂下の湾になったところ(僕はその場所に行ったことはないけれど記憶があるのは、きっと親父がよく話してくれたからだろうと思う)で、餌はサツマイモを蒸かして1㎝くらいの賽の目に切ったもの。
    2尺の野鯉を釣り上げるのに30分くらいかかると言ってたけれど、自分が野鯉釣りを初めてその言葉がよく判った。当時は今のような強い天蚕糸がなかったから、きっと大変な遣り取りをして釣り上げたのだろうと思う。

    しかし、野鯉を食べた記憶が僕にはない。親父は鯉コクや味噌漬けの話をしていたので、きっとそんな食べ方をしたのだろうけれど記憶が欠落しているようだ。
    僕は小学校1年生の頃、家族で相模湖町の伯父の家に引っ越した。
    そこで年上の3人の従兄弟やマツギの勇ちゃんをガキ大将に多くの仲間達に出会い、沢山の遊びを覚えたが、釣りもその一つだった。
    暇が出来ると相模湖に行き、岸辺で大人達が落として行った釣り針捜しから始まり、天蚕糸は家にある木綿糸、竿はその辺の竹藪から取って来た竹、錘も浮子もなく、ただ竿の天蚕糸と針が付いているだけのもの、餌は何処にでも居るミミズ。
    針にミミズを掛け、魚が居そうな場所に投げ込み、自然の重さで沈むのを待ち、天蚕糸を張っていると手にビクビクと言う、何とも言えない感覚が伝導される。

    そこからが勝負となる、最初はその感覚と同時に上げていたが、釣れない。
    繰り返す内に学習能力と感性が一致すると、どの時期に上げればいいか判ってくる。ドバミミズは長いから小さい魚は一気に飲み込めない、だから魚が針に到達するのを待ち続けると、体が「今だ」と教えてくれるので竿を上げると必ず掛かっている。釣れる魚は小鮒やハヤ、オコゼの類であるが小学校1年生の僕には何とも言えない高揚感と達成感が一人前の釣り人気分にしてくれたな。
    その後、瓶拾いや電線拾いでお金を稼ぐようになって、木綿糸の仕掛けから卒業し、ナイロン糸や板鉛や玉浮子を買えるようになると俄然釣りにのめり込んだ。
こんな立派な釣り仕掛けが持てるようになった。
ハリスは当時流行っていた赤色二股のもので板鉛を固定し、その場所に合った棚に玉浮子を装着し、投げ込む。
餌は当然ドバミミズ。

玉浮子がピクピク動き出すと緊張感が高揚し、上げる時を待ち、感性の趨くままに引く。
調子がいい時には2匹釣ることも出来る。
小魚でも2匹掛かると、2匹が違う方向に泳ぐので、その引きはもの凄く強く尺鯉が掛かったのではないかと思うくらいだ。
何時だったかこの仕掛けに2匹の金魚が掛かったことがあったけど、何故相模湖に金魚が居たのか今でも不思議の一つだな。

トム

第三章 社会的責任の理解(その4)

3.3 社会的責任の特徴

3.3.2 社会の期待

 これまでのコンプライアンスは法令遵守と訳されて、法律や決められた社会的規範を遵守することに主眼が置かれてきました。しかし、色々な組織の活動が大きく広がり、グローバル化が進むと共に、組織にはこれまでのコンプライアンスを超えて社会的要請に応えることまでが求められるようになってきました。

 社会的責任は、コンプライアンスを超えて社会の要請に応えることを期待されています。社会的な期待は、それぞれの社会における倫理観やその時々の社会的課題、国際規範、そして文化によって異なってきますから、組織の活動が行われている地域での社会的期待を認識しておくことが必要です。



3.3.3 社会的責任におけるステークホルダーの役割

 組織をとりまくステークホルダーは、組織の構成員や顧客、地域の住民など多岐にわたるのですが、組織がその範囲を定めなければとても広く漠然としたものになってしまいます。そこで、組織は、組織の決定や行動に対して利害関係のあるステークホルダーが誰なのかを確認し、それを特定することが必要となり、これが社会的責任に取り組む最初の一歩となります。

 ステークホルダーエンゲージメントには、ステークホルダーとの対話がなければなりませんが、そのためにも、ステークホルダーの特定をすることが大切になります。ただし、ここで特定されたステークホルダーは、必ずしも組織の属する社会全体と組織との間の利害関係の全てを代表しているとは限らないことを理解しておかなければなりません。

2011年8月31日水曜日

テンカラ師がゆく(番外編)

    今年の銀山湖は雨に祟られ日程の半分も釣りが出来なかったので、テンカラ継承者も消化不良気味のようだ。
 渓流は無理なので津久井湖に出掛けることにした。

雑魚でいいんだけれど、取り敢えず目標は、ランカーのブラックバスを狙え。
矢口釣具店でミミズを買い、中村釣具店の船着き場で釣ることにした。
お盆の時は殺生してはいけないと親父によく言われていたけれど、今日はまあいいか、人なんか居ないだろうと思ったけれど、鯉釣り、鮒釣り、バス釣りと満員だったが丁度この場所が空いてた 。


  右側の和竿は久し振りに使ってみたが、一匹目のニゴイを釣り上げたところ、穂先が折れてしまった。
仕掛けは至ってシンプル。
通し糸にハリスを結び、そこをガン玉で止めるだけ。
目印は玉浮子、適当な棚の深さを決めたら針にミミズを付け良さそうな場所に投げ込むだけ。後は玉浮子がピクピク動くのを待ち、タイミングよく上げる。一匹ゲット。



 釣れるのは、ニゴイかハヤばかりであるが、釣れるからこの釣りは面白い。
そして、何よりも渓流のように移動する必要がないから、仕掛け竿の前に座って読書だって出来るし、慣れない物思いに耽ることだって可能だ。

  本日の目標は10匹と決めていたが、ブラックバスは釣れず、ニゴイやハヤばかりだったが、 10匹目にバスの仲間であるブルーギルを釣り上げ、この小さい人は満足。
 5歳の子でさえもこんなに簡単に釣れる雑魚釣り、たまにはのんびり、こんな釣りも息抜きにいかがですか。

第三章 社会的責任の理解(その3)

3.3 社会的責任の特徴
    3.3.1 一般

 社会的責任はそもそも組織が自らの意思決定の中で、社会や環境に対して自らの意思決定が及ぼす影響について説明責任を負っているということを意味します。したがって、組織は自らの意思決定や行動が自身の利益を図るというだけではなく、社会全体に対して与える影響がどのようになるかについて常に意識していることが必要となるのです。

 組織を取り巻いているステークホルダーは、組織の意思決定や活動によって何らかの影響を受けることになります。ステークとはそもそも賭け事の掛け金のことですが、この「掛け金」を組織に対する利害と考えて利害関係のある人や組織のことをステークホルダーと呼ぶようになったといわれています。ステークホルダーは利害関係という形で組織との関係を保持しています。これは、金銭的な利害とは限りませんので、組織には株主や従業員だけではなく、地域社会や取引関係者という形で、組織は多くのステークホルダーに囲まれているということができます。

 ステークホルダーとの利害関係に配慮することは重要ですが、他のステークホルダーとのコンフリクトが発生したり、配慮したりすることで社会や環境に大きな影響を与えることもありえます。したがって、組織は利害そのものの合法性や環境への影響、社会規範との整合性を見極めつつ組織として独立した意思決定や行動が求められています。

2011年8月24日水曜日

均等待遇・正社員化推進奨励金のご案内

社会保険労務士 富田保宏

 御社の従業員構成が、期間の定めのある契約社員(有期契約労働者)やパートタイマーが多い場合に使えそうな助成金をご紹介します。
 これは均等待遇・正社員化推進奨励金と呼ばれるものです。
 これは、パートタイム労働者や有期契約労働者の雇用管理の改善を図るため、正社員への転換制度や正社員と共通の処遇制度などの改善を図り、実際に制度を適用した事業主に、奨励金を支給するものです。
 改善の対象となる制度には、①正社員転換制度、②共通処遇制度、③共通教育訓練制度、④短時間正社員制度、⑤健康診断制度があります。
 なお、均等待遇・正社員化推進奨励金は、「中小企業雇用安定化奨励金」と「短時間労働者均衡待遇推進等助成金」を今年平成23年4月に整理・統合した奨励金です。

受給要件
 奨励金を受給するには、前記①~⑤のいずれかの制度を就業規則に新たに規定し、パートタイム労働者や有期契約労働者を対象(正社員をも対象とする制度あり)とし、制度ごとに次のような規定があります。

1.正社員転換制度の場合
 正社員転換制度による支給とは、パートタイマー労働者・有期契約労働者から正社員へ転換する試験制度を設け、実際に転換者が出た場合に、対象労働者10人目まで支給するものです。
支給対象
中小企業
大企業
制度導入分(1人目)
40万円
30万円
転換促進分(2人目~10人目)
20万円
15万円
【正社員とは】次の全てを満たす労働者であることが必要です。
(1)期間の定めのない労働契約を締結していること
(2)その事業所において正規の従業員として位置づけられていること
(3)所定労働時間が、フルタイムの正規従業員と同等であること
(4)雇用形態、賃金体系等が正規の従業員として妥当なものであること
(5)雇用保険及び社会保険の被保険者であること
【対象となる事業主とは】次の全てを満たす事業主であることが必要です。
(1)転換日の前日から起算して6ヶ月前の日から1年を経過した日までの間に、雇用保険被保険者である労働者を解雇していないこと
(2)対象労働者の転換日及び支給申請日において、対象労働者のほかにも正社員を雇用していること
【対象となる労働者とは】次の全てを満たす労働者であることが必要です。
(1)正社員転換前に6ヶ月以上、パートタイム労働者・有期契約労働者として雇用されていたこと
(2)正社員転換日の前日から過去3年間、正社員または短時間正社員として当該事業所に雇用されていなかったこと
(3)正社員として雇用することを前提として雇用された労働者でないこと
(4)制度導入日から2年以内に正社員に転換したこと

2.共通処遇制度の場合
 共通処遇制度による支給とは、パートタイマー労働者・有期契約労働者に対して、正社員と共通の処遇制度を設け、実際に適用した場合に支給するものです。
中小企業
大企業
60万円
50万円
【共通処遇制度とは】正社員と共通の評価・資格で、労働者の職務又は職能に応じた区分を設け、その区分に応じた基本給、賞与等の待遇が定められている制度で、次の全てを満たす制度のことです。
(1)職務又は職能に対応した格付け区分を3区分以上設けていること
(2)前記(1)の区分が正社員の処遇制度の区分と2区分以上同じであること
(3)同一区分における、正社員とパートタイム労働者・有期契約労働者の待遇の均衡が図られており、基本給、賞与、役付手当、精勤手当等職務の内容に密接に関連して支払われる賃金の時間当たりの額が正社員と同等であること
【対象となる事業主とは】次の全てを満たす事業主であることが必要です。
(1)制度導入日から2年以内に制度を適用したこと
(2)共通処遇制度の適用日及び支給申請日において正社員を雇用していること
(3)正社員に適用する処遇制度を共通処遇制度と同時又はそれ以前に導入していること
【対象となる労働者とは】次の全てを満たす労働者であることが必要です。
(1)雇用保険の被保険者であること
(2)共通処遇制度の適用後、適用前より格付けや賃金が低下していないこと
(3)正社員と共通の区分に格付けされていること

3.共通教育訓練制度の場合
 共通教育訓練制度による支給とは、パートタイマー労働者・有期契約労働者に対して、正社員と共通のカリキュラム内容と時間による教育訓練制度を設け、中小企業は延べ10人、大企業は延べ30人に実施、修了させた場合に支給するものです。
中小企業
大企業
40万円
30万円
【共通教育訓練制度とは】次の全てを満たす制度であることが必要です。
(1) パートタイマー労働者・有期契約労働者の職務に必要な能力を付与することや、キャリア形成を図るため、正社員と共通のカリキュラム内容と時間等で実施するものであり、次のア~ウに該当しないものであること
 ア)初任者研修や接遇研修等基礎的な知識、能力を付与するためのもの
 イ)指導員、講師等による講義等が全く含まれないもの
 ウ)パートタイム労働法等の労働関係法令により実施が義務づけられているもの
(2)生産ライン又は就労の場における通常の業務とは別に行われる教育訓練(OFFJT)であり、その時間の賃金の他、受講料、交通費等の諸経費を全額事業主が負担するものであること
(3)教育訓練は1人につき6時間以上(休憩時間、移動時間等は除く)であること

【対象となる事業主とは】下記の全てを満たす事業主のことです。
(1)制度導入日から2年以内に、中小企業は延べ10人以上、大企業は延べ30人以上に実施し、修了させたこと
(2)当該教育訓練を修了した労働者の1/2以上が雇用保険の被保険者であること
(3)共通教育訓練制度の適用日及び支給申請日において正社員を雇用していること

4.短時間正社員制度の場合
 短時間正社員制度の場合による支給とは、短時間正社員制度を設け、実際に利用者が出た場合に、対象労働者10人目まで支給するものです。
支給対象
中小企業
大企業
制度導入分(1人目)
40万円
30万円
定着促進分(2人目~10人目)
20万円
15万円
【短時間正社員制度とは】短時間正社員の要件以外に次の全てを満たす労働者であることが必要です。
(1)雇用している労働者または新たに雇い入れる労働者に適用される制度であること
(2)正規の従業員として位置づけされていること
(3)所定労働時間の短縮について、フルタイム正社員と比較して以下のいずれかに該当する制度であること
 ①1日の所定労働時間を短縮する制度
 ②週または月の所定労働時間を短縮する制度
 ③週または月の所定労働日数を短縮する制度
(4)雇用形態、賃金体系等が正規の従業員として妥当なものであること
(5)時間当たりの基本給、賞与・退職金等の算定方法が、同種のフルタイム正社員と同等であること
(6)正社員が制度を利用する場合、育児介護以外の事由で理由できる制度であり、利用期間経過後に原職または原職相当職に復帰させるものであること
【対象となる事業主とは】次の全てを満たす事業主であることが必要です。
(1)制度適用日及び支給申請日において、対象労働者の他にフルタイム正社員を雇用していること
(2)新たに短時間正社員制度を適用した日の前日から起算して6ヶ月前の日から1年を経過した日までにおいて、雇用保険被保険者である労働者を解雇していないこと
【対象となる労働者とは】次の全てを満たす労働者であることが必要です。
(1)本人の自発的な申出により、連続する3ヶ月以上の期間、制度を利用し、かつ制度適用後6ヶ月分の賃金が支給されていること
(2)雇用保険の被保険者の基準を満たす労働者の場合には雇用保険被保険者であること
(3)社会保険の適用事業所である場合には社会保険の被保険者であること
(4)パートタイマー労働者・有期契約労働者が制度を利用して
(5)制度導入から5年以内に短時間正社員制度の利用

5.健康診断制度の場合
 健康診断制度の場合による支給とは、パートタイマー労働者・有期契約労働者に対する健康診断制度を導入し、実際に延べ4人以上に実施した場合に支給するものです。
中小企業
大企業
40万円
30万円
【対象となる健康診断制度とは】次の全てを満たす制度であることが必要です。
(1)下記の①~④のいずれかの制度であること
 ①雇入時健康診断、②定期健康診断、③人間ドック、④生活習慣病予防検診
(2)健康診断等の経費について、
 ①雇入時健康診断と②定期健康診断の場合には、全額
 ③人間ドックと④生活習慣病予防検診の場合には、半額以上
を事業主が負担すること
【対象となる事業主とは】次の全てを満たす事業主であることが必要です。
(1)制度導入から2年以内に、対象となる健康診断を延べ4人以上に実施したこと
(2)健康診断等の経費について、①雇入時健康診断と②定期健康診断の場合には全額、③人間ドックと④生活習慣病予防検診の場合には半額以上を負担したこと