2011年8月24日水曜日

均等待遇・正社員化推進奨励金のご案内

社会保険労務士 富田保宏

 御社の従業員構成が、期間の定めのある契約社員(有期契約労働者)やパートタイマーが多い場合に使えそうな助成金をご紹介します。
 これは均等待遇・正社員化推進奨励金と呼ばれるものです。
 これは、パートタイム労働者や有期契約労働者の雇用管理の改善を図るため、正社員への転換制度や正社員と共通の処遇制度などの改善を図り、実際に制度を適用した事業主に、奨励金を支給するものです。
 改善の対象となる制度には、①正社員転換制度、②共通処遇制度、③共通教育訓練制度、④短時間正社員制度、⑤健康診断制度があります。
 なお、均等待遇・正社員化推進奨励金は、「中小企業雇用安定化奨励金」と「短時間労働者均衡待遇推進等助成金」を今年平成23年4月に整理・統合した奨励金です。

受給要件
 奨励金を受給するには、前記①~⑤のいずれかの制度を就業規則に新たに規定し、パートタイム労働者や有期契約労働者を対象(正社員をも対象とする制度あり)とし、制度ごとに次のような規定があります。

1.正社員転換制度の場合
 正社員転換制度による支給とは、パートタイマー労働者・有期契約労働者から正社員へ転換する試験制度を設け、実際に転換者が出た場合に、対象労働者10人目まで支給するものです。
支給対象
中小企業
大企業
制度導入分(1人目)
40万円
30万円
転換促進分(2人目~10人目)
20万円
15万円
【正社員とは】次の全てを満たす労働者であることが必要です。
(1)期間の定めのない労働契約を締結していること
(2)その事業所において正規の従業員として位置づけられていること
(3)所定労働時間が、フルタイムの正規従業員と同等であること
(4)雇用形態、賃金体系等が正規の従業員として妥当なものであること
(5)雇用保険及び社会保険の被保険者であること
【対象となる事業主とは】次の全てを満たす事業主であることが必要です。
(1)転換日の前日から起算して6ヶ月前の日から1年を経過した日までの間に、雇用保険被保険者である労働者を解雇していないこと
(2)対象労働者の転換日及び支給申請日において、対象労働者のほかにも正社員を雇用していること
【対象となる労働者とは】次の全てを満たす労働者であることが必要です。
(1)正社員転換前に6ヶ月以上、パートタイム労働者・有期契約労働者として雇用されていたこと
(2)正社員転換日の前日から過去3年間、正社員または短時間正社員として当該事業所に雇用されていなかったこと
(3)正社員として雇用することを前提として雇用された労働者でないこと
(4)制度導入日から2年以内に正社員に転換したこと

2.共通処遇制度の場合
 共通処遇制度による支給とは、パートタイマー労働者・有期契約労働者に対して、正社員と共通の処遇制度を設け、実際に適用した場合に支給するものです。
中小企業
大企業
60万円
50万円
【共通処遇制度とは】正社員と共通の評価・資格で、労働者の職務又は職能に応じた区分を設け、その区分に応じた基本給、賞与等の待遇が定められている制度で、次の全てを満たす制度のことです。
(1)職務又は職能に対応した格付け区分を3区分以上設けていること
(2)前記(1)の区分が正社員の処遇制度の区分と2区分以上同じであること
(3)同一区分における、正社員とパートタイム労働者・有期契約労働者の待遇の均衡が図られており、基本給、賞与、役付手当、精勤手当等職務の内容に密接に関連して支払われる賃金の時間当たりの額が正社員と同等であること
【対象となる事業主とは】次の全てを満たす事業主であることが必要です。
(1)制度導入日から2年以内に制度を適用したこと
(2)共通処遇制度の適用日及び支給申請日において正社員を雇用していること
(3)正社員に適用する処遇制度を共通処遇制度と同時又はそれ以前に導入していること
【対象となる労働者とは】次の全てを満たす労働者であることが必要です。
(1)雇用保険の被保険者であること
(2)共通処遇制度の適用後、適用前より格付けや賃金が低下していないこと
(3)正社員と共通の区分に格付けされていること

3.共通教育訓練制度の場合
 共通教育訓練制度による支給とは、パートタイマー労働者・有期契約労働者に対して、正社員と共通のカリキュラム内容と時間による教育訓練制度を設け、中小企業は延べ10人、大企業は延べ30人に実施、修了させた場合に支給するものです。
中小企業
大企業
40万円
30万円
【共通教育訓練制度とは】次の全てを満たす制度であることが必要です。
(1) パートタイマー労働者・有期契約労働者の職務に必要な能力を付与することや、キャリア形成を図るため、正社員と共通のカリキュラム内容と時間等で実施するものであり、次のア~ウに該当しないものであること
 ア)初任者研修や接遇研修等基礎的な知識、能力を付与するためのもの
 イ)指導員、講師等による講義等が全く含まれないもの
 ウ)パートタイム労働法等の労働関係法令により実施が義務づけられているもの
(2)生産ライン又は就労の場における通常の業務とは別に行われる教育訓練(OFFJT)であり、その時間の賃金の他、受講料、交通費等の諸経費を全額事業主が負担するものであること
(3)教育訓練は1人につき6時間以上(休憩時間、移動時間等は除く)であること

【対象となる事業主とは】下記の全てを満たす事業主のことです。
(1)制度導入日から2年以内に、中小企業は延べ10人以上、大企業は延べ30人以上に実施し、修了させたこと
(2)当該教育訓練を修了した労働者の1/2以上が雇用保険の被保険者であること
(3)共通教育訓練制度の適用日及び支給申請日において正社員を雇用していること

4.短時間正社員制度の場合
 短時間正社員制度の場合による支給とは、短時間正社員制度を設け、実際に利用者が出た場合に、対象労働者10人目まで支給するものです。
支給対象
中小企業
大企業
制度導入分(1人目)
40万円
30万円
定着促進分(2人目~10人目)
20万円
15万円
【短時間正社員制度とは】短時間正社員の要件以外に次の全てを満たす労働者であることが必要です。
(1)雇用している労働者または新たに雇い入れる労働者に適用される制度であること
(2)正規の従業員として位置づけされていること
(3)所定労働時間の短縮について、フルタイム正社員と比較して以下のいずれかに該当する制度であること
 ①1日の所定労働時間を短縮する制度
 ②週または月の所定労働時間を短縮する制度
 ③週または月の所定労働日数を短縮する制度
(4)雇用形態、賃金体系等が正規の従業員として妥当なものであること
(5)時間当たりの基本給、賞与・退職金等の算定方法が、同種のフルタイム正社員と同等であること
(6)正社員が制度を利用する場合、育児介護以外の事由で理由できる制度であり、利用期間経過後に原職または原職相当職に復帰させるものであること
【対象となる事業主とは】次の全てを満たす事業主であることが必要です。
(1)制度適用日及び支給申請日において、対象労働者の他にフルタイム正社員を雇用していること
(2)新たに短時間正社員制度を適用した日の前日から起算して6ヶ月前の日から1年を経過した日までにおいて、雇用保険被保険者である労働者を解雇していないこと
【対象となる労働者とは】次の全てを満たす労働者であることが必要です。
(1)本人の自発的な申出により、連続する3ヶ月以上の期間、制度を利用し、かつ制度適用後6ヶ月分の賃金が支給されていること
(2)雇用保険の被保険者の基準を満たす労働者の場合には雇用保険被保険者であること
(3)社会保険の適用事業所である場合には社会保険の被保険者であること
(4)パートタイマー労働者・有期契約労働者が制度を利用して
(5)制度導入から5年以内に短時間正社員制度の利用

5.健康診断制度の場合
 健康診断制度の場合による支給とは、パートタイマー労働者・有期契約労働者に対する健康診断制度を導入し、実際に延べ4人以上に実施した場合に支給するものです。
中小企業
大企業
40万円
30万円
【対象となる健康診断制度とは】次の全てを満たす制度であることが必要です。
(1)下記の①~④のいずれかの制度であること
 ①雇入時健康診断、②定期健康診断、③人間ドック、④生活習慣病予防検診
(2)健康診断等の経費について、
 ①雇入時健康診断と②定期健康診断の場合には、全額
 ③人間ドックと④生活習慣病予防検診の場合には、半額以上
を事業主が負担すること
【対象となる事業主とは】次の全てを満たす事業主であることが必要です。
(1)制度導入から2年以内に、対象となる健康診断を延べ4人以上に実施したこと
(2)健康診断等の経費について、①雇入時健康診断と②定期健康診断の場合には全額、③人間ドックと④生活習慣病予防検診の場合には半額以上を負担したこと