2012年1月25日水曜日

人権に関する課題(その3)

今回は、人権の中で特に重要な課題である「差別」についてです。
差別に対しては、組織の積極的な関わりが望まれます。

5 差別及び社会的弱者

    差別とは、正当な理由がないにもかかわらず、ある属性の人々に対する対応が平等ではなく、機会の均等も図られていない状況のことをいいます。差別の根拠には、年齢、性別、人種、民族、言語、階級、宗教、性的指向、障害の有無、政治的所属等、多くのものがありますが、差別は主観的な側面もあるために、その内容は地域や文化によって大きく差異があります。

   組織は、自らのステークホルダーに対して直接的、間接的に影響力を及ぼす範囲については、差別が行われることがないように常に注意を払うことが必要です。そのためには、人権に関するそれぞれの地域での専門機関や国際機関を活用することも有効な対応策となります。

   組織は、差別を防ぎ、現在存在している差別を解消するために積極的に当事者を支援したり、他者に働きかけを行ったりすることが望まれます。それは、単に社会的責任の遂行というだけではなく、女性や障害者、児童、先住民など差別の対象となっている社会的弱者とされてきたい人々が差別の解消と共に社会参加していく中で、社会全体に期待される可能性もより広がり組織の目的をより達成しやすくなるというプラスの側面があるのです。

2012年1月18日水曜日

人権に関する課題(その2)

今回は、「加担の回避」と「苦情解決」の二つについて解説します。

3 加担の回避
   人権の侵害は、組織が直接関わって発生するよりも、他の組織等によって行われている人権侵害に関与してしまうことのほうが多いのではないかと思います。取引先が途上国で行われている児童労働に関与しているような場合です(受益的加担)。加担は、組織が自らのサプライチェーン全体について注意をはらい、人権侵害が発生しているような場合には、他の組織に対して積極的にその解消のために影響力を及ぼすことも考えられます。

4 苦情解決
    組織の活動によって、人権の侵害が発生したという苦情の発生があった場合には、組織はその事実を確認し、実際に人権の侵害が発生している場合には、その救済を図る必要があります。組織は自ら、人々が利用しやすく公平であり、透明性の高い仕組みを構築しておくことが必要です。しかし、それらの仕組みがぞれぞれの地域での法的手段の行使について制限することにならないようにしなければなりません。