2011年8月3日水曜日

企業における「義」~氏綱の五か条

冒頭コラム(弊社メールマガジン)の続きのようになってしまいますが、日本の戦国時代の話です。
戦国時代はいつからいつまでか。
いくつかの説がありますが、北条早雲が箱根を越えて小田原城を
奪取した時を始まりとし、北条氏滅亡による天下統一のときをもって
終わりとするという説を私は採りたいと思っています。
つまり、北条氏に始まり北条氏に終わったということです。

歴史上重要な役割を果たしていながら、ドラマや小説ではいつも
脇役になってしまう北条氏。
その二代目に氏綱という人がいまして、これがなかなかの名君として評価
されていますが、氏綱の「五か条の訓戒」はあまり知られていません。


 一、大将から侍にいたるまで、義を大事にすること。
     たとえ義に違い、国を切り取ることができても、
     後世の恥辱を受けるであろう。

 一、侍から農民にいたるまで、全てに慈しむこと。
     人に捨てるようなものはいない。

 一、驕らずへつらわず、その身の分限を守るをよしとすべし。

 一、倹約に勤めて重視すべし。

 一、いつも勝利していると、驕りが生まれ、敵を侮ったり、
     不行儀なことがあるので注意すべし。

これは現代の企業経営では「クレド」と言われているものに相当する
のかもしれませんが、横文字でなければ浸透しないものでしょうか。
特に気になったのは最初の、

 「大将から侍にいたるまで、義を大事にすること。
 たとえ義に違い、国を切り取ることができても、後世の恥辱を
 受けるであろう。」

滅亡となれば、破産どころか一家全滅の憂き目が待っている戦国時代に
おいて、競争よりも義を大事にせよと言うからには相当の覚悟があっての
ことでしょうし、これを「大将から侍にいたるまで」とこだわっているのは、
経営理念が下々まで浸透するかどうかを心配してのことでしょう。
「利益を失っても良いから義を優先せよ。」
こんなことを本気で言える経営者が果たしてどれほどいるでしょうか。

北条氏に始まり北条氏に終わった激動の戦国の世において、お家騒動を
一度も起こさなかった奇跡の大名も、やはり北条氏でした。
企業にとっての「義」はきれい事なのかどうなのか。
そもそも皆さんの会社における義とは何でしょう。
難しいテーマです。

(Kojiro Hino)