今日は県内の高校で「市民社会とコンプライアンス」と題して講演を行いました。
高校2年生に向けてコンプライアンスを語ると言うことは、初めての経験でした。
社会人向けのコンプライアンスセミナーは日頃よく行っていますが、高校生にも考えてもらえるテーマはなんだろうかと思いまして、「法令遵守の難しさ」を前半のテーマとし、後半では「信頼」をテーマとしました。
コンプライアンスと信頼を結びつけて考えると言うことは、世間ではあまりなかろうかと思いますが、広い意味でのコンプライアンスを理解してもらうためには、信頼というキーワードで考えてもらう方がしっくり来ると思いました。
法律を守っただけでは信頼されない。
法津に違反したからといって信頼を失うとは限らない。
これは日本人の精神構造の問題と関係するテーマでもあるかもしれません。
私たちの考え方のに中には、法令遵守とは相矛盾する別の価値基準があって、それは普段意識していないルール、いや「空気」みたいなものであって、それが実際の法令の運用に大きな影響を及ぼしている現実があります。
現実の問題として、「許される法律違反」「許されない法律違反」「法律違反ではないが許されない行為」といったものがあって、人が生きるために必要なルールというものは、必ずしも法律や制度だけでなく、各人の心の中や社会全体の意識として存在するルールというものも無視できないという現実を、高校生の皆さんにも考えてもらいたかったのです。
何のための法令遵守か。
人はロボットではありませんから、法令という指令にただ従って生きているわけではありません。
我々は法に対してどのように向き合ってゆくべきか。
そういったテーマを将来考えてゆくスタート地点として、考えるきっかけの一つを提供させてもらいました。
これは、生きる力を独力で養っていただく試練の道を指し示すことでもあります。
最後に、「あなたはどのような人を信頼するか。」
また、「あなただけのルールは何か。」
という問いかけもしました。
これは私自身にとっても重大なテーマです。
私は普通の人よりも法律にくわしい人間ですが、100%の法令遵守をできる自信はありません。
また、日常的にズボラでいい加減なところもあります。
それでも私には、絶対に譲れない「自分だけのルールがあります。」
そのルールは、私にとっては法律よりもはるかに重要なものです。
それを捨ててしまったら、私は私でなくなってしまう。
それがあるから、私は今、お仕事を任せていただいているのだと思っています。
今回の講演が高校生の皆さんにとってどれほど有意義だったのか。
それは彼らの今後の人生において、私の言葉がどれほど影響したかということでわかることであって、今の私には見当もつかないことです。
ただ、私がこれまでの経験で蓄積してきた教訓を1時間に集約して話させていただきました。
私にとっては、非常に有意義な機会でした。