アメリカで昨年成立した金融規制改革法には、新たに紛争鉱物資源に関する条項か盛り込まれています。紛争鉱物とは、児童労働によって採掘されていたり、鉱物の売却利益が武装勢力の資金源となっていたりするなどの恐れがある鉱物のことをいいます。今回成立したアメリカの金融規制改革法では、アメリカの上場企業が紛争鉱物を利用することでコンゴ民主共和国の紛争地域の武装集団による虐殺や略奪、性的暴力に結果的に加担するということを防止し、非人道的行為を抑制するために、コンゴ民主共和国及び隣接諸国から、コルタン、錫石(スズ)、金、タングステンについてその使用に関する情報開示を義務つけるというものです。
これらの鉱物は、いわゆるレアメタルと言われて携帯電話やパソコンといったIT機器のほか、自動車部品、電化製品など幅広い製品に利用されています。これらの鉱物を使用するメーカーのうち、証券取引委員会(SEC)に登録している上場企業は、早ければ2011年の会計年度からの情報開示義務に対応しなければならないという可能性があります。実際の規制がどのようなものになるかは、現在具体的な規制について意見の受付が行われていますので、もう少し様子を見る必要があります。
日本の企業の場合、アメリカで上場している企業のであれは、紛争鉱物の情報開示が必要となりますから、今後の動向を見ながら早急にコンプライアンス体制の見直しが必要となります。しかし、実際に日本の企業にとって大きな問題となるのは、国内の部品や素材メーカーが、取引しているアメリカのメーカーのデューデリジェンスに関連して、この規制に従っていなければ規制対象のアメリカ企業との取引が困難になるという事態ではないかと思います。これまで、日本企業は人権や児童労働には比較的関心が低かったのですが、サプライチェーンがグローバル化している中にあって、遠いアフリカの人権問題だからといって無関心ではいられなくなってきているのです。
(imamura)