2011年4月1日金曜日

行政書士として震災後の行政のあり方について思ったこと

昼ごはんを食べたくてたまたまで立ち寄った居酒屋さんで、風営法の相談を受けました。(事務所のそばの店ではありません)

その店で先日、店内でイザコザがあって警官が店に来たところ、深夜酒類提供飲食店の届出を出しているか?と警官から質問され、さらにその許可証があるか?と問い詰められたとのことです。

店主はそのような届出のことを知らず、届出はしていなかったことを説明したところ、すぐに届出するよう指導されたとのことです。

制服の警察官が風営法のことをそこまで理解しているというのは珍しいことだと思いました(勘違いも含まれているようでしたが)が、指導の内容はおおむねごもっともなことで、店主としてはすぐに所轄署の生活安全課へ相談にゆき、開業届出書類一式をもらってきたのだそうです。

ところが平面図の描き方などがよくわからず不安だったので、たまたま居合わせた私が相談を受けたと言うことです。
ランチ代をタダにしていただく代わりに、店主さんがつくった図面にかなり激しい修正を加え、どうにかこうにか最低限の内容を書き込み、届出の際の注意や届出書の記載事項の修正などもして、後はご自分で届出できるようアドバイスしました。

その店はどこにでもよくある横長カウンター付の小さな居酒屋でして、店主としては「なんでウチなんかが風営法の許可をとらなきゃならないのか」と仕切りに愚痴をこぼしておられましたが、「許可ではなく届出なのですよ」と何度も説明しました。

それはともかく、今回の震災で世の中が大きく変わるとしたら、どのような方向性へ向かうのだろうかと、から揚げを食べながら考えておりました。
目下の懸念は節電のことです。

節電を推進するためには非効率な事業活動を早々に合理化する必要に迫られます。
残業を減らし、無駄な作業を減らさないと、限られた電力でこれまでどおりの業務実績を維持することができません。

すでに行政から産業界へ様々な節電要請が出ていますが、これはやがて業務の効率化を推進することと同じ意味のことになるでしょう。

もしそうならば、行政は単に業界へ効率化を期待するだけでなく、行政自身も効率化を図らなければならないのだと思いますし、国民はそれを行政に対して強く期待するべきでしょう。

無駄な義務、無駄な手続、無駄な手間をなくす。
つまり、今存在する制度を早急に見直して、節電効果を上げなければならないということです。

例を挙げれば先ほどの深夜酒類提供飲食店の届出のことです。
居酒屋に開業届出をさせることにどのような意義があるのか。
平面図の精密さ、書類に記載させた情報の量や正確さなどで、申請人に過度の負担をかけていないだろうか。

一枚の書類を提出させるたびに、その作業工程や交通、印刷コストなどで様々に電力が消費されているはずです。
行政が国民に対して気軽に申し付けてきた様々な要求。
こういったものが果たして適切であるのかどうか、ということを今後見直してゆかなければ、行政面における効率化はできないし、行政が産業界に節電を要請する資格も無い、ということになりえるかと思います。

風営法においても、様々のムダが指摘されてきました。
同じ人間が短期間に管理者講習を何度も受けていたり、複数店舗を保有する事業者の役員変更届出が店舗ごとに提出するため煩雑であったり、新規出店に不当なリスクを負わせたり。

そういった要求が現実にどのような効果を生むかという事がほとんど考慮されないまま、行政側の都合(少なからず無理解と無思考が原因なのですが)で存続してきましたし、行政書士という存在はそれに悪乗りしていたところがあります。

こういった行政手続や制度上のムダと言うものは探せばキリが無いのですが、こういったことが今後見直されて簡素化されてゆくという方向へ向かってゆかざるを得ないのではないかと、フト思った次第です。

そうであるならば、私のような行政書士などという職種の者は、単に書類を作り、手続を行うだけではダメで、むしろ事業者が法令を守り、リスクを管理し、自分自身で手続を行ってゆくことを間接的に支援することの方がより重要であろうと思うのです。

すでにそのような方向性で我が事務所は動いているのですが、ランチのから揚げ定食をいただきながら、そのようなことを思ったという、ただそれだけの話でした。

HK