法務省から会社法の改正要綱の案(第一次案)が公表されました。今回の改正案に
関しては、法務省の法制審議会では、当初オリンパスや大王製紙の不祥事を受けて、
経営の透明性を確保するために「監査役会設置会社で会社法上の大会社(資本金5億
円以上または負債200億円以上)」か「有価証券報告書の提出義務のある企業」に義
務付けることを検討していたのですが、経済界からの反発を受けて社外取締役設置を
会社法で義務化することは見送りとなりました。
それに代わって、設けられることになりそうなのが、社外取締役を選任しない会社
については「その企業がなぜ社外取締役を選任しないほうが妥当なのか、その理由を
開示すること」という規定です。
これは、イギリスで活用されている comply or
explain (ルールに従え、さも
なくば、従わない理由を説明せよ)という考え方によるものです。ルールに従わない
企業は、その理由を自ら説明し、ステークホルダー(株主などの利害関係者)の判断
にまかせることになります。
この考え方を会社法で採用するとなると、法人の自由な選択の余地を残しつつも、
一定の法的な効果を持たせるという点で、日本ではこれまでになかった規制の手法と
なってきます。
次第に、法律だけで明確にならない規制が増えつつあります。企業の自由な判断が
可能になるということですが、それは「自ら決め、その判断が確信を持って正しい」
ことを説明し、ステークホルダーの納得を得なければならないということも意味しま
す。
法律の規範性が希薄化していく中で、企業は自らの社会的な責任を自覚して自立す
ることが求められているのです。
(今村 正典)