2012年10月11日木曜日

少年兵とCSR(のぞみ総研メルマガ2012.4.11より)

 4月、日本では新入学の時期です。
街を歩いていると、真新しいランドセルやカバンを持った子どもたちを
たくさん見かけます。
この国では、ほぼ全ての子どもが必要な教育を受けることができている
ということを実感できる光景です。

 ISO26000(JIS Z 26000)では、
「労働における基本的原則及び権利」(6.3.10)の中で特に児童労働に
触れた部分があります。
日本では、ほとんどの子どもが就学し、児童労働に従事することがない
(ただし、日本でも児童労働の数は増えつつあります)ので、あまりピン
と来ないし、関係ないのでは? という質問を受けることもある部分です。

 日本から目を転じてみると、世界では、2億人以上の子どもたちが
何らかの児童労働に従事しています。
それらの労働は、過酷であったり搾取的であったりするものも多く、
地球規模の大きな課題となっているのです。

 児童労働の中でも、ILO(国際労働機関)が「最悪の形態の児童労働」
であるとされているのが、武力紛争における子どもの使用です。
アフリカやアジアの紛争地域では反政府ゲリラなどの武装勢力だけでは
なく、正規軍ですら子どもの使用が行われています。

 小型で安価、しかも軽量の武器の存在が武力紛争で子どもが使われる
大きな原因となっていますが、これらの武器の購入の費用として、コルタン
(コンデンサーなどの原料)などの鉱物資源の売却益があてられることも
多いのです。

 児童労働によって採掘された鉱物資源が、電子部品の原料として売却され、
その売却益は少年兵が使う武器の原資となります。
日本で子ども達が遊んでいるゲームに使われている部品の原料にも、あなた
の持っている携帯電話の部品の原料にも、そういった鉱物が使われている
かもしれません。

 ISO26000(JIS Z 26000)では、「ボックス4」(4.7)
という囲みの中で、「加担」について触れています。
ここには、「・・・組織は、こうした不法行為に対して沈黙していた場合、
又はこうした不法行為から利益を得た場合にも、加担したものとみなされる
かもしれない。」とあります。

 日本から遠く離れた紛争地域の問題が、社会的責任と大きく関連する
可能性があります。
ある会社さんでは、社員の皆さんが自らこういった方針を打ち出しました。

○ 紛争から利益を得ない企業を目指します。
○ 私たちは紛争に関わるあらゆる活動をビジネスの対象としません
○ 企業が紛争を予防するために、利益を社会に還元し、安心して暮らせる
  世の中を創ると同時に、倫理観・価値観を育む努力を継続的に行います。

 これも、ISO26000(JIS Z 26000)の大きな活用事例です。
ひとつひとつの小さな取り組みが、大きく社会を変える原動力となるのです。

(今村 正典)