平成23年3月11日、現世の殆どの人が経験したことのない未曾有の大災害が東日本を蹂躙した、被災者に日本中の人が「ガンバレ」と声を掛ける。
今、被災者の方に他人が善意で無責任に投げかけるこの言葉は必要だろうか。
日本の言葉には全て意味があり、そして何よりも大切な魂がある。
日本語の魂を「言霊」と呼ぶ。
それでは「がんばろう」の言霊ってどんなことだろう、漢字で書くと「頑張ろう」である。
これは「我を張る」と言う言霊であって、頑は「かたくな」であるから、これを踏まえて考えると「頑張ろう」とは、頑なに我を張ることである。
窮地に立たされた時や奮起しなくてはならない時に、自身を振るい立たせ、それを脱却するため弱音を吐かず踏みとどまる覚悟の言葉である。
僕も過去に何回か他人から「ガンバレ」と声を掛けられ、それに応えられた時のことを思い返してみると、思うほど自身はガンバっていなかったような気がする、だからその 言葉を違和感なく受け入れられたのだと思う。
今、未曾有の大災害に直面している人の全ては、正に頑なに我を張っている。
大災害の埒外に居る人は、励ますつもりでその人達に「がんばれ」と言うけれど、極限までがんばっている人には酷な言葉であるような気がする。
僕は「今を生き抜いて下さい」としか拾う言葉がない。
瞬間に過ぎ行く今を生きられたら、それはきっと明日に繋がるはずだから。
大災害に直面している人、望みを捨てないでしっかり今、この瞬間を生きて欲しいと思うし、日本人の矜恃は捨てたもんじゃないはず、だから諦めることだけはして欲しくない。
トム