先日、㈱武蔵野さんの会社見学に参加させていただく機会がありました。
社長の小山昇氏は、中小企業経営者向けの著作やセミナーなどでとても
有名な方ですから、ご存知の方も多いのではないかと思います。
社長室は会社のミーティングルームも兼ねていて、古びた押入れや
欄間もある創業当時の姿が残されたとても変わった部屋なのですが、
部屋の隅に「8000万円の椅子」が置いてあります。
贅の限りをつくした高級な椅子・・・ではなく、2000円くらいで
売っていそうな何の変哲もないミーティング用の椅子です。
不思議に思ったので、案内をしてくれた社員の方に聞いてみました。
すると、以前展開しようとした事業がうまくいかず、撤退したときに
この椅子だけを残したのだとのこと。
新規事業に進出するために投資したお金と撤退に要したお金などが
莫大な金額になり、最後に残ったのはこの椅子だけになって計算したら
それが8000万円となったので、つまり「8000万円の椅子」
という訳です。
徳川家康が三方ヶ原の戦いで敗走した際に書かせたという肖像画の逸話を
思い出すような話です。
仕事に取り組んでいるとどうしても失敗を恐れてしまって、結局取り組む
ことすらしなかったり、腰が引けてうまくいかなかったりということがあります。
失敗を恐れるのではなく、果敢にチャレンジしつつ、それがうまくいかない
ときには引き際を見極めることが重要だということがこの椅子を見ていると、
じんわりと実感できるような気がしました。
(今村 正典)