2011年8月10日水曜日

第三章 社会的責任の理解(その1)

ようやく用語の定義も終わり、今回からは第三章に入ります。

 第三章では、社会的責任について歴史的な背景(3.1)やグローバリゼーションの進展による最近の動向(3.2)などについて説明された後で、ISO26000について理解するために必要な社会的責任の特徴(3.3)や、国家との関係性(3.4)について述べられています。

 3.1 組織の社会的責任:歴史的背景

社会的責任の歴史的な背景は、古くは欧米諸国の教会が武器・煙草・酒・ギャンブル等に関係する企業には投資しないという「ネガティブスクリーニング」による投資先の選別という動きにはじまります。その後は、それぞれの時代背景と共に、公民権運動や環境問題などの社会問題と関連しながら社会的責任は色々な課題に対応することとなりました。

1980年代後半から90年代前半には、企業を財務面だけではなく「環境的側面」「社会的側面」「経済的側面」という3つの視点から評価するというトリプルボトムラインの考え方や、現在のニーズだけではなく、将来のニーズも考慮するべきであるという「サスティナビリティ」(持続可能性)という概念が広がり、主に企業においてCSR(企業の社会的責任)として社会に定着していきました。

しかし、持続可能な発展には企業だけではなくより多くの組織が社会的責任に寄与することが重要であるということから、ISO26000では全ての組織に対する社会的責任として捉えられています。

歴史的な流れからもわかるように、社会的責任は社会的な背景によって常に変化するものなので、変更が容易にできない硬直的なものでは対応することができません。したがって、ISO26000で挙げられている中核主題や課題というものは現在において社会的な課題に対して最良の対応をするためのベストプラクティスであるということができます。

社会的責任は、社会からの期待に応じて柔軟に変化するものなのです。