労働安全衛生法の遵守事項と罰則規定
社会保険労務士 富田保宏
職場の労働者を守るため安全衛生法令に関しては様々な規定があります。よく会社様からは安全衛生の罰則にはどんなものがあるのですかと質問される時があります。ここで振り返ってみましょう。
安全衛生法には、様々な事項に対する違反行為に対して、事業者に罰則が設けられています。
(1)一番罰則が重いものに、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」があります。これに該当するものには、
重度の健康障害を生ずる化学物質(黄燐マッチ、ベンジジンおよびその塩など)を製造、輸入、使用、提供した場合
があります。
(2)次に重いものに、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」として
特定機械等の製造許可を受けていない場合
特定機械等の個別検定、型式検定を受けていない場合
製造の許可を受けないで化学物質を製造した場合
があります。(特定機械等とは、一定のボイラーやクレーン、エレベータ等の特に危険な作業を必要とする機械のことです。)
(3)「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」として
危険防止、健康障害防止について規定されている事項を事業者が実施しなかった場合
特定機械等の製造時の検査等を受けなかった場合
特定機械等の個別検定、型式検定に合格していない機械等を使用した場合
製造許可対象の化学物質を許可条件で製造しなかった場合
特別教育を行わなかった場合
伝染病等の病者を就業させた場合
労働者が労働基準監督署等に対し、法律に違反していることを申告したことを理由に事業者が不利益な取扱いをした場合
作業主任者を選任しない場合
があります。
(4)最後に、「50万円以下の罰金」として
総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医を選任しない場合
定期健康診断、特殊健康診断を行わなかった場合
健康診断結果を労働者へ通知しない場合
雇入れ時の安全衛生教育を行わなかった場合
特定機械等の個別検査、型式検定に合格していない機械等に虚偽の表示をした場合
労働基準監督官、安全衛生専門官の立入り調査を拒否し、または質問に対して陳述をせず、もしくは虚偽の陳述を行った場合
事業者が講じる労働災害防止のための措置を守らない場合(この場合には労働者に罰金が科せられます)
があります。
最近の動向として
昨年平成23年10月24日に発表された「労働安全衛生法の一部を改正する法律案」には、
(1)メンタルヘルス対策の充実・強化
「医師又は保険師による労働者の精神的健康の状況を把握するための検査を行うことを事業者に義務付ける。」など
(2)型式検定及び譲渡の制限の体操となる危惧の追加
(3)受動喫煙防止対策の充実・強化
「受動喫煙を防止するための措置として、職場の全面喫煙、空間分煙を事業者に義務付ける。」など
が上がっています。来年度中(平成24年度)に施行される予定です。
安全衛生法関連の法改正には目を離すことができないですね。
【参考記事】
「労働安全衛生法の一部を改正する法律案要綱」の労働政策審議会に対する諮問及び同審議会からの答申について