2011年9月28日水曜日

第三章 社会的責任の理解(その7)

3.4  国家における社会的責任

 ISO26000の中では、規格が国家の機能を一部でも代替することはないと規定せれています。この部分には、その理由が書かれています。同じ人権を守るということにしても、それは国家の義務であるからこの規格で扱う社会的責任とは異なっているということが述べられています。

 従って、規格自体が何らかの法的な規制となって組織に何らかの義務を課すということはないということになります。しかし、組織はそれでこの規格と向き合う必要がないと考えることはできません。

 一つには法規制が行われる際の基準のひとつとして参考にされることが挙げられます。今後、環境や雇用などの分野ではサスティナビリティに関する法規制が増加していくことが予測されますが、その際国際規格であるISO26000が参考にされることは十分に考えられます。特に、規格策定にあたっては多くの途上国も参加しており、これまで不十分であった環境規制や雇用問題の対応に応用されることもありえます。

 また、法令による直接的な規制がなかったとしても、組織が行った活動や決定に関して社会からの評価についても、組織は考慮しなければなりません。国家による規制がなかったとしても、法規制ではないソフトローの一部になることは考えられます。また、組織が自らの活動や決定について説明する際の指針のひとつともなるのです。