2009年9月10日木曜日

カラオケ業界のリスクについて思うこと

シダックスと言えば大手カラオケチェーンですが、風適法違反容疑で書類送検されたそうです。
詳細はこちら↓
http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009090801000841.html

あまり知られていませんが、風適法は一般の飲食店にも規制をかけています。

①深夜営業に関する客引き禁止
②深夜営業に関する客引きのための通行妨害やつきまといの禁止
③18歳未満の者に夜10時から日の出時までの時間に接客させることの禁止
④夜10時から日出時までの時間に18歳未満の者を営業所に立ち入らせることの禁止(保護者同伴の場合を除く)
⑤営業所で20歳未満の者に酒、たばこを提供することの禁止

以前に大手餃子店チェーンでも、おなじように風適法違反(未成年者への酒の提供)で立件された事例がありました。

ところで、この事件では未成年者が酒を要求した際に店が拒絶できず、結局は救急車の出動を要請するまでの事態になってしまったのですが、このケースはカラオケ店業界にとって単純なミスとして済まされないリスクを含んでいます。

今回の立件は、「一般の飲食店」がたまたま風適法違反をした、という扱いになっています(たぶん)。

しかし、このような事件がカラオケ店で発生する場合は、個室、つまり店側から目が届きにくく、客を規制しにくい「隔離された狭い空間」で発生してしまうでしょう。

実は風適法ではこのような現象をあらかじめ想定しています。
ですので、深夜に酒類を提供する飲食店に対して「深夜酒類提供飲食店」としての開業届出を公安委員会に行うことと、構造設備基準を維持することを義務付けています。

さて、本件店舗が公安委員会に届出をしていたかどうかは知りませんが、もし深夜酒類提供飲食店であるなら次のような構造設備基準があります。

<客室が複数存在する場合には1室の床面積が9.5平米以上でなければならない>

※狭い空間に酔っ払った男女を押し込めたらどんなトラブルが起きるかもしれないので一定の広さを確保することを求めているのです。

<個室の面積が広ければ問題がおきない>ということではないのですが、いずれにせよこのような設備基準が法令として存在しているのです。

この条件を一般的なカラオケチェーンが全店全室でクリアしているのかどうか、皆さんはどう思われますか?

というのも、かつて、とあるカラオケチェーン店の個室をみたときに、「あきらかに9.5平米には足りないなあ」と思ったことがあるのです。

さらに、もう10年近く前の話になりますが、ある警察幹部の方にこのことを聞いてみたことがあるのですが、「もし社会問題にでもなれば無視できない」というようなお答えをいただいた気がします。

さらにさらに追加しますと、ある警察署の担当者が、とあるカラオケ店について構造設備基準違反を指摘したという噂を耳にしたことがあります。(よく気がついたなー犬

つまり、カラオケ店業界そのものに風適法違反のリスクあり?ということになるのではないかと。

現状ではこの問題について行政は執着を示していないと思います。
すでに社会に定着し、特に問題が起きていない営業について、違反として取り締まるのはしのびない、という感覚は私には理解できます。

しかし、カラオケ店における違反やトラブルが社会問題として取りざたされてゆくと、やがて行政も腰をあげざるを得ないと思うのです。

つまり将来、届出しない業者に対する行政処分が発せられるかも知れず、そうなると店舗の構造を変えざるを得ないケースが続出するかもしれず、業界全体として重大な問題に発展するかもしれません。

このように、法令には「使われる部分と使われない部分」があって、それは一般の市民感覚からは「トンデモナイ」というとらえ方をされるかもしれませんが、常に変化する社会情勢に応じて法を運用するのはなかなか難しいこともあります。

そして、こういった現象はなにもカラオケ店業界だけのことではなく他の飲食業界でもありうることであり、風適法に限ったことでもなく、警察行政に限ったことでさえもありません。

たとえば、駐車禁止でキップを切られているドライバーがよく
「なんであそこの駐車禁止をほっておくんだ。あっちを先にやれよ!」
などと文句を言っている光景があります。

しかし、その違反キップを切っている場所は、実はよく小学生が自動車事故に遭遇している場所だったりするかもしれません。

行政としては、社会にとって危険のあるポイントを優先的に処理するのは当然で、問題が少ない部分は後回しになりがちです。

それを見て「みんな平気でやっているから大丈夫なんだ」と思うのは早計です。
将来問題が生じれば摘発されるかもしれないのに、そのリスクを無視してしまえばいつか後悔します。

このように、世間の印象と実際の法の運用にはズレがあるのだという認識は企業コンプライアンスを考える上で重要なポイントだと思います。