2011年1月12日水曜日

「関連ニュース」から読み取るものとは

 このメールマガジンでは「法務・コンプライアンス関連ニュース」のコーナ
ーで、ネット上で閲覧できるニュースの中から主に企業コンプライアンスに関
連する話題を紹介しております。

 世間では「法律を守ること」がコンプライアンスであると思われがちですが、
どんな法律も、「その法律を運用しようとする人」がいて初めて意味が生まれ
ます。
 誰も知らない、誰も使おうとしない法律ならば、それは法律として存在して
いないことと結果として同じですし、逆に、法律として存在していないルール
であっても、それを守るのが当然だと社会に認識されていれば無視できなくな
ります。

 たとえば、今週の「食品製造元に関する届出漏れ」というニュースでは、大
手企業でさえ軽視していた法律違反が最近になって発覚したという話ですが、
消費者庁は今後は監視を強化すると言っており、消費者や行政の動向で法の存
在意義が変化しています。

 バイク買い取り専門店のサイトにおける査定比較の問題は、法律違反である
前に、<バレてしまえば消費者の不信を買う行為>だったからニュースになっ
たのであって、「法律違反」とは異なる倫理的次元に対処できるするが企業に
とって重要であることを物語っています。

 このように、現実に起きている法的リスクは「法律に違反しているかどうか」
という机上の知識だけで把握できる問題ではないのです。

 ネット社会が浸透して行くなか、社会の目線はときに感情的で不公平な視点
を含みながらも、針の先でつつくような細かさ、企業側の意図を見抜く疑い深
さが、日々増してきていることを感じます。

 こういった社会の目線の変化に影響されて、行政やマスコミ、企業の判断が
左右されてしまう現実があります。

 たとえ法律が変わらなくても、人の意識が変われば法やルールの使われ方も
変わるのですから、日々社会の動向に注意することは現実のコンプライアンス
においてとても重要なのです。

 企業側では「法律を守ればそれで良い」といったような「白か黒か」的な発
想で企業法務の雰囲気を作り上げている傾向がまだまだ濃厚です。

 そんな状況でも今まで何とかなって来たのなら、それは「運が良かった」と
いうことであって、今後もそれで済むほど甘いものではないでしょう。

 法的リスク判断は企業の生き様や個性に直結するテーマなのですから、経営
陣が「法律のことは専門家や行政の判断に任せれば良い」といったような単純
な思考であるとしたら、その企業は非常に危険な状態にあるのだと思います。

 今年も企業コンプライアンスの重要性はより重く、より複雑になってゆくは
ずですが、私達のぞみ総研は現実的で適切なリスク管理体制の構築を支援して
ゆくため、日々前進して行きます。

 2011年もどうぞよろしくお付き合いくださいませ。
(日野孝次朗)