2013年6月19日水曜日

現代の情報機関

「米国家安全保障局(NSA)や米連邦捜査局(FBI)が米国の大手通信会社などから密かにユーザー情報を収集していた」ということを元CIA職員が暴露してしまい、ニュースで話題になっていました。
その元情報員は香港に逃げ込んで中国政府に保護されているので、中国政府からのハッカー攻撃を非難しようとしていたオバマ政権は難しい立場に追い込まれています。

米国内においても、違法な通信傍受をしていたのではないかとの懸念が出ていますが、米政府当局からは「米国人は対象ではない」というコメントが出たため、これについて欧州あたりから反発が出ています。
外国人に対してならやっていいのか? という新たな問題になるわけです。

グーグル、フェイスブック、アップルなども一連の情報収集に関与していたらしく世界的な批判の声があがっています。

そして16日のニュースでは、英国政府の情報機関が2009年のG20首脳会談で各国政府高官の電話やメールを傍受していたことが暴露されました。なんと、政府間の通信傍受のためにわざわざニセのインターネットカフェをこしらえていたという話もあります。

情報機関は「国内外の情報を収集・分析し、政府に報告することで政策立案に資する国家機関」だそうです。
日本では公安警察や自衛隊などの一部にそれに似た機関がありますが、米国のNSAやCIAほどの本格的な機関ではないようです(たぶん)。

戦前には陸軍に特務機関という組織がありまして、ロシア革命を扇動した明石元ニ郎や、インド独立運動に関与した岩畔機関などは有名ですが、現在ではどうなのでしょう。

一昔前は、スパイ、つまり人を使って情報を収集する方法が一般的でした。
ソ連のスパイとして日本で活躍したリヒャルト・ゾルゲは有名です。
日米開戦前、日本がソ連に侵攻する意図が無いことをスターリンに報告したことが、その後の独ソ戦の行方と世界の歴史に影響を及ぼしたと言われます。
 
しかし最近ではスパイよりもITを駆使した手法が強化されていたようです。
今日のニュースでは「市民の電話や電子メールなどの情報収集活動を通じて50件以上のテロを未然に防いだ」とNSAの当局者が証言したということです。
その背景として、世界のネット通信の8割が米国の情報機関によって収集分析されているという話もあります。
 
情報を盗むことは、他国より優位に立つために重要な手段です。
しかし、方法によっては国際的な信用を損なうことになります。
そこまでしなければならないほどに、現在でも国家間の駆け引きは厳しいのだということは言えるでしょう。


(日野 孝次朗)