2010年1月8日金曜日

論文に出典を示さずに転載

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100108ddm041040063000c.html

ニュース記事というものは、たまにクビをかしげる内容があって、このニュースについても、著作権法上の妥当性とかいうことではなくて、なぜこの内容が全国紙の記事になるだろいう、という点で不可思議に思います。

現在国立の研究所の所長をしている人が、厚生省の職員だった1980年代後半に書いた論文をまとめた著作集を2003年に出版し、その中で他の研究報告書の一部を出典明示せずに転載していたということが問題として指摘されたというニュース。

確かに著作権法として問題があるのかもしれませんが、その話がどうして2010年になって新聞沙汰になったのかという点について、世の中やマスコミの奥深さを感じ入ってしまいます。(これは皮肉です。)

1980年代。
しかも行政機関での話。
想像するに、著作権法のことなどほとんど意識していなかったでしょうし、それはこの所長さんだけがそうだったということではなくて、厚生省も他の官庁も、もしかすると世間全般としても、現在ほどには著作権というものを意識していなかったはずです。

ニュースの中でも、「今から考えると問題だが、(広報誌に載せた)当時は(報告書は)厚生行政に資するものだから出典を出さなくていいと言われていた。引用も構わないと理解していた」と説明いたということが書いてありました。
出版当時に気がついていればよかったということにもなります。

法的に問題があるのはわかりますが、マスコミが昔の話を蒸し返すなら、これ以外にいくらでもネタがあるはず。
問題だと言うことなら、なぜその当時に問題にしなかったのか。
どうして今なのか。
きっとそれなりの理由があるはずですが、そのあたりは読者にはわからないことです。

この話には、著作権法とは別の人間模様が背景にあるように感じられます。
法律問題と言うものは、人間関係の積み重ねの結果として突然踊りだしてくることがよくあります。
だから、法律だけで白黒つけないでくださいとか、長期的な視野でリスク判断をしましょうとか、日頃の姿勢や態度に気をつけましょう、などといった話になります。
後で後悔しないことがリスク対策の目的だとすればの話ですけれど。